gallery2

2003年1月のINAXギャラリ−2 Art&News
元永定正 展
― いろだまあかしろきいろ ―

会期 : 2003年1月6日(月)〜28日(火)
休廊日 : 日祝日

Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。



なないろかみさま

入澤ユカ (INAXギャラリーチーフディレクター)

会場写真

久しぶりで元永さんの作品を堪能した。2002年初夏、西宮市大谷記念美術館で私は、フフフ、ハハハと声を出して笑った。タイトルを読んではまた笑った。「いろだまごまいしろ」は色玉が画面のヒトガタから吐き出されて床に転がっている作品の5枚組の大作。モチーフのかたちが白。同じく白と赤ふたりのヒトガタの横長の作品は「いろだまよこしろあか」。黄色のは「いろだまよこきい」と「き」ではなく「きい」だった。たまはなないろがいっぱいに。

元永さんを捕まえようとするのは、不可能だ。作品も人物も。変幻自在、神出鬼没、奇想天外、即興詩人、天才画家、音感絵師といってみたが、近づくどころか遠ざかる。いっそ演画歌手、七色仮面、人喰人種、不良長寿、命名名人、天涯個毒、朗人悔悟と、苦しまぎれの四文字造語でも元永さんは捕まらない。その豊かさは、関西ことばによっても増幅されている。かみさまと天才は関西ことばをしゃべるのだと思うほど、元永さんのことばにはニュアンスがある。正確な符丁のようなタイトルだけで、ことばの領域の人々をも打ちのめす。
「ぐにゅぐにゅしろい」「たくさんしかく」「うえきいろ」「えんぴつこすり」「にじんでる」。図録に掲載されている作品のタイトルを、順にたどっただけで、ひとことで作品のすべてを指し、作品をこえ、遊んでいて、誇らしく煙にまく。ハハハハ、ヘヘヘ、ホホホホホは、溶かされまいと身構えた私の恐怖のうめきごえ。ここまで書いても作品そのものに触れられないでいる。

近年とみに、描いたまま、できたまま、見えたままをタイトルとする元永さんは、たくまずのたくらみをもって、私たちに多くの、深いものを語る。西宮市大谷記念美術館では、一室を床壁ぜんぶ白く覆い、全身で踊る制作ライブの痕跡が展示になっていた。そのヴィデオを見ながら、悠悠自適ならぬ悠悠自敵の元永さんを見た。好きなことを、好きにやっているように見せる達人は、自らの敵とダンスの抱擁のように抱き、ともに遊び、語り、掛け合い、うたっている。自敵とは自分であり、表現であり、芸術かもしれないし、家族であり、隣人であり美術界のようなものであるのかもしれない。いやそんな想像をする「とらわれたものぜんぶ」に対して悠悠自敵な元永さんがいた。
雅であり、稚であり、悦であり、「まるごとぜんぶさんかくしかくあかしろきいろこすりながれもりあがり」な元永さんの、ひらがなのやわらかさをもった作品は、絵本人気からもうかがえる。元永さんを大好きな絵本作家として育ってきた多くのこどもたちがいる。いやおとなもいる。絵本の元永さんは、こどもたちに、かたちや色やことばのはじめてとして伝わる。「ころころ」「がちゃがちゃ」「どんどん」と、音と色とかたちと、暖かい手やいい匂いとともに伝えられていく。
わたしたちも正月、清められて元気になりたくて、元永さんの作品で2003年をひらく。




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