gallery2

2003年12月のINAXギャラリ−2 Art&News
浜田周 展
― 輪郭をする彫刻 ―

会期 : 2003年12月1日(月)〜22日(月)
休館日:日祝日

Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。


輪郭をする彫刻

浜田展 浜田展
浜田 周は金属を用いた彫刻作品をつくる。鉄、銅、アルミ、ステンレスなどを作品によっては単体で、あるいは違う金属を張り合わせたり、隈どったりする。甲冑のようなトルソーや、小さな王冠のようなかたち、あるときは、へこみの部分が人体の輪郭のように見えてくるものもある。久しぶりに立体作品を彫刻と言うことばで語れる新鮮さのなかにある。いま、立体作品の多くに彫刻と言うことばを使うと違和を覚えることが多いのは、彫ったり刻んだりしていないという技法上の理由ばかりではなく、いつの間にか彫刻が、置かれる場所を失ってしまっているためなのではないか。彫刻家も私たちも、彫刻じたいもその理由を探せないままでいる。

夏の終わり田園にある小ぶりな美術館で、浜田の新作を何点か見た。展示室の中と、たてものが比翼のように囲み、前方が空と田園に開けた芝生の場所におかれた金属の作品は、場所を得て、呼吸しているように感じられた。回りこんだり近づいて見ていると親しげなきもちになってくる。作品は、親密な空間にあってそこの風景や、見ている私の感情にも、満ちてくるように作用してくる。 浜田の彫刻には、建築の構造や外観の部分、工場の機械や装置の一部のように見えるものもある。それらは構造と輪郭の両義性をもっていて、人体のような、棺のような、そこにいない不在の輪郭を示している。追憶と、瞬時でかなたに消える未来がいっしょに入っている、とどめることができない輪郭のうつわのようだった。
彫刻がいつの間にか場所をなくしたのは、精巧で巨大な遊戯施設や体感装置の氾濫のためなのではないか。あるいは金属や新素材でつくられる映像やアニメーションから生まれた無数のフィギュアによって、彫刻サイズの造形は私たちの視野に入らなくなってしまった。巨大か極小のかたちの海で、彫刻は溺れてしまったのだ。
少し前まであっていつの間にか消えたかたちや感触を、浜田は探す。胸や腹部に穴のあいたトルソーのその穴は、充填されてあった世界への追憶と、それらを一瞬にして未来の彼方へ吹き飛ばしてしまう通風孔の、二重のしかけのようだった。ほとんどの作品に共通するのは、常に反転し瞬時に入れ替わってしまう裏と表への思索だった。浜田の空無と充足の二重構造を示す、構造と一体のフレーム感が清新だ。
いくつもの思いを込めたに違いないネーミング。穴のあるトルソーは「Imperfect Body」。不完全な不在のボディ。芝生に置かれたアルミの作品は「Cage For Two」。二段になった枠をもつ、窪みのような囲われの場所。浜田の彫刻は、視線によって光によって、輪郭という窪みに、満ちては消え、また満ちる。
彫刻が思索を導くものだったといういまさらの発見が、ここにある。

入澤ユカ
(INAXギャラリーチーフディレクター)




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