INAX PUBLICATION

INAX出版 営業日誌

INAX出版 の書籍が置いてある全国の書店をご紹介します(在庫の有無は書店にご確認下さい)。
このページは、INAX出版・営業担当者が毎月連載します


ジュンク堂書店 新宿店

2005年11月 ご紹介
三越外観 10月30日に開店1周年を迎えたジュンク堂書店新宿店をご紹介します。
ジュンク堂書店は西日本を中心に23店舗を展開し、8年前に池袋本店をオープン、関東に初進出を果たしました。 店内に椅子を配置して「座り読み」を公認した先駆け的存在で、見上げるような棚に専門書を揃えた書店として、版元(出版社)に名の通っているジュンク堂ですが、一般的認知度は低く、首都圏のお客様からは店の場所に関する問いあわせも多いそうです。 とはいえ、豊富な品揃えと、細かく手の入った棚づくりで、本が好きなお客様が固定しつつあるようです。
新宿店は、三越アルコット館7〜8Fに1100坪、在庫数90万冊と、地区最大規模を誇ります。某大型書店本店の目の前に出店が決まった時には「新宿書店戦争」と話題にもなりました。
7Fが一般書のフロアで、雑誌・文芸・新書・趣味実用・旅行・児童・学習参考書・コミックなど、8Fはビジネス・人文・医学・理工・音楽・芸術・洋書など専門書が揃い、INAX出版の本もこちらの建築書の棚にほぼ全点が置かれています。 また購入後の書籍が持ち込めるカフェも併設しています。
7Fは女性、8Fは男性のお客様が中心で、典型的な土日集客型の書店です。 下の売り場からエスカレーターをご利用になるお客様が多い休日に対し、平日はエレベーターでダイレクトに来店される慣れたお客様が多いように見受けられます。
7Fレジ前 8F店内とCAFE 8F店内

これまで神戸三宮、池袋店などを取材してきた私共の印象では、ジュンク堂は書棚の前に平台を置かず、面陳も多用せず、つまり「1点でも1冊でも多く、他店には無い本を置く」とのイメージが強くありましたが、池袋の約半分の店舗面積で、しかもJR山の手線で4駅の距離で同じ事をやっても意味がないと、本の内容にあわせて「棚の中でどう置くか、全体をどう見せるか」に腐心しています。
話を伺った理工書担当の土井氏は「量ではなく、棚の中身を見て頂きたい」と言います。氏は神戸と大阪で理工書を担当、4年前の福岡店立上げに関わり、最初は苦戦したものの「広々した売り場で自由に好きな事をやれた2年9カ月」が終わる頃には地域一番店に押し上げました。 新宿店異動が決まったと同時に、売上データに頼らずに「置きたい本」をリストアップ、それを新宿の棚に持ち込みました。 その台帳を見せて頂きましたが、手書きでISBNコードがびっしりと書かれた膨大なものでした。
「例えば"ガウディ"の本だけ並べるならアルバイトでも出来る。それに今はネット書店で、検索した本の脇に数点の関連書がリンクされる時代。だが所詮はただのデータであり、店頭はそれとは違った売り方ができる筈。本と本、棚同士をリンクさせて、全体の流れをつくり、仕掛けるのが書店員の仕事で、まだまだいくらでもやりようはある」という土井氏の話を聞きながら、出たばかりの当社新刊『現代住居コンセプション』がシリーズの定位置・作家別・住まいの3箇所に置かれていた事、そして今春にセシル・バルモンドの『Informal』(TOTO出版)が出た時にも、読み物と構造の2カ所の棚で展開して後者の棚でも動いているのに土井氏がガッツポーズをつくっていた姿などを思い出しました。

工学書協会ブックフェア 取材時にも8Fのフェア台で<パラダイム・シフト−工学における持続可能性・複雑系へのパースぺクティブ>と銘打った工学書協会フェアを開催中で(10/1〜10/30終了)、版元側が「実はヨソではあまり売れなくて」と申し訳なさそうにいうのを聞いて、逆に開催を決めたそうです。 このフェアが当たり、開始早々から動き始め、半月で100冊以上、しかも特定の点数でなく幅広く売れているといいますから驚きです。 販促物として36項目11ページからなる「キーワード集」を担当者が作成し、無料で配布しました。 こういった努力も売上に貢献していると思われます。
「この仕事の醍醐味は、『こんなんどやろ』と投げたボールを、お客様がキャッチしてくれた瞬間に味わえる。 『カット・ボールや(スライダーとちゃいまっせ〜)』と投げたのを、相手が『判ってるわ』と捕ってくれる、そんなキャッチボールが楽しい」と土井氏。 工学書協会フェアの売り上げを見ても判るように、そういうお客様が新宿店にはついているようです。 「新宿店は決して万民受けするような書店ではないと思う」と土井氏は言いますが、あまり本とは関係ないグッズや稀少本などを手掛ける書店がふえている昨今、この店の棚づくりは非常にオーソドックスで、スタンダードといえます。
8F店内 8F建築書コーナー 8F店内

取材の最後に、こちらが「出版営業日誌の取材では、普段どれだけその書店を見ているか、店員から言葉を引き出せるかが問われるので、どうしても原稿には出来不出来がモロに出る」と正直に吐露すると、土井氏は「それは書店の棚も同じですよ」と受けて下さいました。 「普段からどれだけの本を読んでいるか、普段からどれだけ考えながら仕事をしているか、棚を触っているか。意識していれば、新刊配本があった時に、アンテナにビビッと引っ掛かるし、それが全てに反映される」。良くも悪くも、棚には書店員の個性が出るそうです。 「今の棚は僕の趣味が全面に出ているけれど、もし担当が変われば棚も変わるのは当然。好み、強弱の付け方は人によって違う」。 例えば…と土井氏が引き合いに出したのが"虹"。「日本人はたいてい虹は7色と答えるが、それは我々が"虹=7色"と教わっているから。処が変わり、もしその地域に紫色の概念が無ければ"3色"にしか見えないでしょう」という話に、成る程と思いました。 同時に土井氏の棚を引き継ぐ人は大変だなぁ、とも。
かくいう土井氏は「仕事は家に持ち帰らない主義」で、オン・オフの切り替えがはっきりしています。 若い頃から歴史が好きなので「その類の本ならいくらでも読む」そうですが、それはあくまで趣味の延長。 東京に来て一年、下町界隈を自転車で走破したり、今年になって鎌倉や箱根にも足を伸ばしました。 先の社員旅行(沖縄!)では県内の世界遺産をくまなく回ったそうです。

此処にくれば必ず手に入るというよりは、此処にくれば何かおもろい本に出会える、とお客様に常に期待を抱かせられる、一番最初に来て貰える書店が土井氏の理想です。 「同じ売るにしても、ある一点の本を一番多く売る店にしたいし、そういう店員になりたい」とも。 例えば、年1回転しかしない本を年2回転させられるような、その為に必要な社内システムづくりにも意欲的です。
「本を買う側だけでなく、出す側(版元)をも唸らせる棚をつくりたい。『そうきたか』と思わせるようなフェアを版元にも提案して欲しい」との言葉に、身の引き締まる思いがした今回の取材でした。

関連LINK:工作舎サイト「本の仕事人#007」 http://www.kousakusha.co.jp/KEC/hon007.html
*土井氏へのインタビュー記事がより詳しくまとまっています


ジュンク堂書店 新宿店

〒160-0022
東京都新宿区新宿 3-29-1
新宿三越アルコット 7・8F

TEL:03-5363-1300
FAX:03-5363-1301

営業時間:11 : 00〜21 : 00
休業日:アルコット休館に準ずる(年内は無休)

ジュンク堂書店 URL: http://www.junkudo.co.jp/


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