商業都市・大阪の市街地でありながら、まだ庶民生活の匂いが漂う界隈に、柳々堂書店はあります。

「御本(ゴホン)といえば柳々堂」。このユーモラスなキャッチフレーズは、かの有名な「ゴホンといえば龍角散」というコマーシャルに由来して付けられたものです。
外見からはそのユーモラスなフレーズも、店内の品揃えも伺い知ることはできませんが、一歩店に入ると、5〜6坪という小さなスペースにぎっしりと詰まった本の量に圧倒されます。

柳々堂は明治26年に創業し、今年で105年めになります。大阪の町を見つめ続けてきた老舗の本屋さんです。創業当時は一般の書籍を扱う書店でしたが、設計事務所が多いという西船場特有の立地条件を生かし、先代の3代目店主から、建築書を取り扱うようになりました。

「量より質を大切にする」という先代の意志を継いで、大型書店とはひと味違うカラーを出し、建築雑誌は過去3年間のバックナンバーを揃えています。書籍も、新刊・既刊を問わず「良いものを品揃えする」という本へのこだわりを大切にしています。

また、スクーターや自転車の荷台に大きな風呂敷包みを載せて、といった古風な配達サービスも行っています。
地元のみならず、全国に多くの固定客を持ち、注文書籍の地方発送もしています。

INAX出版の本はほぼ全点揃っています。新しい出版目録ができた時には、お得意先の建築事務所を中心に何百部という冊数を配布して下さるなど、力強い限りです。

時代と共に変化する書店の中で、しっかりと大阪の地域に根付き、地元の建築関係者とのコミュニケーションを大事にする柳々堂。4代め店主は松原満佐子さんと井上正信さんのお二人です。
お話しからは本への愛情と店主としての熱意、暖かい人柄を感じました。