| 2010年1月14日 インタビュー:大橋恵美 (INAX文化推進部)
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| 大橋 |
「2009アジア現代陶芸 新世代の交感展」(愛知県陶磁資料館)で作品を拝見して、よくこんなかたちが出来たなと驚きました。中に何を入れてつくったのですか。
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| 宋 |
ビニール製のビーチボールに綿の紐を巻き、泥しょうをつけて焼きました。よく見ると溶けたビニールの色が中に残っています。
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| 大橋 |
土に色を混ぜて焼いていますか。
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| 宋 |
黒っぽい色が欲しかったので、黒土に釉薬やマンガンなどを少し混ぜています。
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| 大橋 |
まんまるではなく、張子の蓋もの、蓋で開く籠のような不思議なかたちですね。何か意図があるのでしょうか。
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| 宋 |
いえ、窯の中で自然に崩れてしまったんです。丸いかたちをつくりたかったのですが、窯に入れたら、重さで下がって、最初は固まらなくて潰れてしまいました。それも面白かったのですが、丸くしたかったらちゃんとやりなさいと先生が方法を教えてくれて。硬くて重いやきものの固定概念を変えたくて、糸や紙といった軽い素材を使ったのですが、同じ方法でもかたちや強度、窯の状態によって全然違ってきますね。
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| 大橋 |
それが面白いですよね。
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| 宋 |
楽しいですね。新聞紙だけを重ねて丸く硬くして、泥をつけてそのまま焼いたら不思議な半円になってそれも面白かったです。
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| 大橋 |
爆発したようなかたちですが、激しさではなくナイーブさを感じます。タイトルもないし、いろんなふうにイメージできる作品をつくろうとしていますよね。
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| 宋 |
タイトルは自由な印象を邪魔すると思うのであまりつけたくありません。自分の頭の中にあったイメージとしては、カルシウムがなくなると骨がスカスカになりますよね。そういう、肉体的な痛みだったり、秋に木の葉が朽ちて自然に穴ができる様子を表現したいと思いました。
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| 大橋 |
球体のフォルムがテーマなのかなと思っていましたが、痛みや喪失のかたちみたいなことだったのですね。
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| 宋 |
やっぱり自分から出てきているものですから。丸いかたちは宇宙や世界なんです。
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| 大橋 |
韓国では、今とは全く違う具象的な人体の作品でした。それとは違うものをつくりたくて日本に来たのですか。
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| 宋 |
学部生のときから他の素材も使ったインスタレーション作品が一番好きで楽しかったんですよ。韓国はアメリカからの影響を受けた作品が多い傾向があるので、もっと土だけでなくて、窯の中でいろんなものを焼いたら面白いのにと思っていました。固定概念を変えるようなものを自由に表現したかった。
調べたら、京都市立芸大が陶芸ではアバンギャルドで先生の考え方が私と合っていました。土の物質性の研究や表現がとても魅力的に感じました。日本の現代陶芸には面白い作品がたくさんあります。
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| 大橋 |
それで、日本に来てからの作品は。
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| 宋 |
まずクモの巣の作品、それから紐、新聞紙、日常のいろんな材料を使ってみました。100円ショップでよく素材を見つけます。発泡スチロールに磁土をつけて焼いたり、ヘチマに泥しょうをつけて焼いたりもしました。
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| 大橋 |
発泡スチロールだとすぐ溶けてしまうのによくかたちが残りましたね。どろっとしているところが新鮮ですね。
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| 宋 |
人によって感想が違いますね。グリル用の石炭でつくった作品もあるんですが、ねずみの糞とかお米とか皆想像するものが違います。
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| 大橋 |
このかたちは平たい陶板のような意識ですか。
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| 宋 |
表面をよく見せるためのかたちです。燃やすと中が全部からになるので軽いですよ。
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| 大橋 |
低温で焼くのですか。
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| 宋 |
いえ、1230〜1250度です。硬さが必要になるので温度は高いです。
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| 大橋 |
宋さんはどうして土の道を選んだのでしょう。
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| 宋 |
子供のころからつくるのは好きでした。小学校では、絵が上手だからと先生から特別に選ばれて練習していました。あるとき絵の大会で、国立中央博物館の、白磁に鉄釉で龍が描いてある有名な国宝の壷を描きました。誰かの描いた絵や写真を上手に写す練習ばかりをしていたので、実際の立体物を平面に描くことが、その壷が素晴らしい作品だったこともあって本当にショックだったんです。一年間練習して、絶対に賞を獲ろうと思っていたのに、獲れなかった。
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| 大橋 |
それはショックですね。
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| 宋 |
描いている時も、これをつくりたい、つくりたいと思っていました。そこからつくりたいという思いが強くなって、中学生から美術方面に進みたいと両親を説得して美術塾に通いました。美術の専門の中に陶芸があるのも中学三年の頃まで知らなかったんです。何を専攻しようか迷っていたら、友達に陶芸もあるよと言われて驚いた。それだ!私にぴったりだ、それをやりたいと思って、決めました。
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| 大橋 |
小さいときに家に壷や茶碗や花瓶はあったわけですよね。そういうものをつくろうとは思わなかったのですか。
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| 宋 |
思いませんでした。だから陶芸では何をつくるのか友達に聞いたんです。いつも壷とかなのかと。そうしたらオブジェもあるし自分のつくりたいものはなんでもつくれるという。
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| 大橋 |
その龍の壷と出会ってなかったら全然違っていたかもしれませんね。それを見たときに、白磁の歴史や龍の伝説や筆さばきや、つまり世界そのものを感じてしまったんでしょうね。だから自分もそういうすごい世界観を表現したいと思って今に繋がったんじゃないでしょうか。
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| 宋 |
今でもその壷の絵や細かいところまで全部覚えています。
あと私はクリスチャンなのですが、聖書の天地創造は土から始まる。私は土なんだ、私も神さまみたいに、土で私に似ているなにものかをつくるんだと。小さい頃から聖書を勉強してきて、思春期の頃には人間はどうして生まれて死ぬのだろうと思って、そこから生と死という自分の芸術の考え方が発展していきました。
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| 大橋 |
すごいですね。土から生まれて土に戻る、そんなところまでいってしまう。それで実際にその世界に入ってみてどうでしたか。
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| 宋 |
ろくろもすごく楽しかったし、何でも自分の思うかたちが出来る。それは本当にやった人だけが知っていることですよね。やきものを辞めた人でも、その魅力は覚えているし、戻ってくる人もいる。
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| 大橋 |
いま陶芸は特に日本の若い人の間ではアートとの境界がなくなってきています。宋さんはどんな作家が好きなのでしょう。
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| 宋 |
芸術の世界の壁はなくなってお互いに自由に表現できるようになると思います。私は陶芸をやっていますが、彫刻やインスタレーションにも関心があります。韓国だったらナム・ジュン・パイク、日本ならオノ・ヨーコが好き、それからびっくりしたのは草間彌生ですね。
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| 大橋 |
60〜70年代に活躍していた人たちですね。
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| 宋 |
そんな昔にすごいことをもうやってしまっている。私はもっと未来にいるのだからより新しい感覚でやらなくてはと思います。今は韓国でも新しい表現をしている若い作家が沢山いるので、楽しみです。
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| 大橋 |
ありがとうございます。展示を楽しみにしています。
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/インタビュー終了//>