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日本の壁 展
−鏝(コテ)は生きている−

牢固な石によって代表される西洋の壁にくらべ、土を塗りこめた日本のそれは、人間にとってはるかに親和的な存在だったように感じられます。
日本の壁は、土蔵や倉のように厚いものもふくめて、文字どおり生きもののように呼吸し、それゆえに外気との温度調節の役割を果たしていました。そして、それらの壁は、単に仕切りや防火のためだけではなく、あるときは背景として、あるときは点景として、その土地土地に独特の美しい風景を構成してきたといっても過言ではありません。

しかしいま、そういった壁が、いわゆる新建材にとってかわられ、日本全国を単調さで塗りつぶしてしまいつつあることは、ここでいまさらいうまでもありません。いいかえれば、壁は出しゃばらず、控えめにたたずむゆえに、身近にありながら、私たちはそれをことさらに見ることをしなかったのかもしれません。そのあいだに、それは、だんだんと冷たいものに変わり、ますます私たちの気持ちから遠いものになっているのです。

本展は、日本の家屋における重要な在来工法のひとつである「壁」を、あらためて見直すものでした。京壁、聚楽壁、大津壁から漆喰彫刻まで、その種類と仕組みを、ご覧いただきました。
展示品の多くは、とくにこの展示のために、本場京都の左官屋さんたちが腕をふるってくださいました。それらによって、私たちは、ひとくにち“土壁”といっても、その色合いといい、テクスチュアといい、じつに多様な表情をもっていることを知らされました。そしてまた、それらが、私たちの生活を、どんなに潤してきたかということをも。

展示にあたっては、関係の皆さまがたに多大なるご協力をいただきました。この場を借りてあつく御礼申し上げます。

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図録・BOOKLET『 日本の壁
INAX出版が発行する建築とデザインを探検するシリーズ




会 期
ギャラリー1 ギャラリー大阪
1985年5月〜7月 1985年9月〜10月


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