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まわる、まわれ水ぐるま


ごあいさつ

建築をテーマにしたINAXギャラリー、今回は、ちょっと目先を変えて、水車の展覧会を開催することになりました。題して「まわれ、まわる水ぐるま展」。

水車は、明治・大正のころまで、生活の智恵と創意を反映させ、さまざまな用途に応用されて、全国ほとんどの町や村で見られました。 ところが、戦後、動力源としての水が石油や電気にとってかわられると同時に、急速に姿を消していったのです。 いまでは民芸風の料理屋さんの立て看板がわりに使われているのがせいいっぱいといったところでしょうか。

ところが「どっこい水車は生きている」のです。 全国でおよそ1,000基以上の水車がりっぱに稼動しています。 揚水や製粉だけでなく、産卵用のシャケの捕獲、ワラ打ち、茶もみ、線香づくりや窯業用岩石の粉砕、発電などのために、その土地土地に個有の暮しのにおいをしみこませて、ひそかに永遠の時をきざんでいるのです。

今回の展示では、実物、模型水車、歯車の一部の他、写真で見る分類別水車、水車をうたった短歌や俳句などをご紹介し、又、全国各地で元気に廻る水車を、臨場感豊かにビデオ放映いたしました。 水車を愛する多くの方々の熱意あふれるご協力を頂いて、実現した展示です。

監修にあたられたのは、一橋大学助教授の室田武氏 (1986年当時)。 室田氏は「水土蘇生」を合い言葉に、精力的に全国水車行脚をつづけるニュータイプの実践派学者であり、静岡県藤枝市に拠点をもつ「水車むら会議」の代表者でもあります。 室田氏と同じく、水車のためなら労をいとわないフリー・カメラマンの河野裕昭氏には、写真提供等で大変お世話になりました。

自然の水の流れをエネルギーとして、廃棄物も出さず、公害も生まず、いわば天恵のエコロジー・システムに身をまかせるようにして動くこの伝統的な手づくり装置に、いささか大げさにいうなら21世紀の地球を救うオータナティヴ・テクノロジー、つまり、もうひとつの代替的技術の象徴を見ることができるのではないでしょうか。

水車がになう過去から未来への橋渡し的役割、そして何よりもたのしみながら、回転運動が杵の上下運動にどう移し変えられるか、そのメカニズムだけでもふれていただければ幸いです。

INAXギャラリー





図録・BOOKLET『 まわる、まわれ水ぐるま在庫切れ
INAX出版が発行する建築とデザインを探検するシリーズ



会 期 (終 了)
ギャラリー1 ギャラリー大阪
1986年6月〜8月 1986年9月〜10月



INAXギャラリー 過去の展覧会記録




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