ごあいさつ

INAXギャラリー大阪8月は少し趣向を変えた展覧会を開催します。吉阪隆正展−ことば、すがた、かたち−。 建築界にその特異な光彩を放って輝いていた吉阪さんが歿して、はや6年。建築家と呼ぶだけにはあまりにも大きかったスケールを、今いちど辿ってみようという試みです。
建築家、考現学者、哲学者、探検家、登山家、そして、真の教育者。彼をよく知る多くの人は、その多様な貌に魅せられて、今なお強い磁力で引き寄せられています。

吉阪さんは4才の時、父上の仕事でジュネーブに渡ったのを最初に、イギリス、パリに学び、40代以降は、文字どおり世界中を歩きまわりました。どこの土地に行っても、真すぐな曇りない眼で対象をみつめ、理解し、愛した世界人、吉阪隆正。彼にとって建築とは、最も人間くさい、生きることにまつわるすべてが集約されたものでした。

今展では、経本仕立てのエスキース十数点や写真パネル、原寸の詳細図面や模型などを展示します。それらはすべてが厖大に残された一部でありながら、確実に吉阪さんの姿が見えてきます。地球的スケールで、すべてを重層的に捉え、常に原点を求めていく姿勢が、今痛切に求められているのではないでしょうか？
彼をよく知る人にも、はじめて出会う人にも、新鮮な驚きと、多くの示唆が感じられることと思います。
どうぞご覧ください。

INAXギャラリー大阪