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大正「住宅改造博覧会」の夢展
−箕面 桜ヶ丘をめぐって−

ごあいさつ

大正11年に日本建築協会主催の一大イベント「住宅改造博覧会」が、大阪の箕面、桜ヶ丘で開かれました。 当時は、中流階級と称されるサラリーマン層が新しい都市住民として定着しはじめた時期であり、また、大正デモクラシーを背景に、洋風の暮らし方・住い方を基調とする "文化生活" が「生活改善同盟」などによって盛んに提唱された時期でもありました。 こうしたムーブメントは、一方では郊外住宅地の成立を促し、また一方では椅子式生活や家族本位の間取りなどを基本コンセプトとする、いわゆるいわゆる洋風化住宅 (文化住宅) を誕生させることになります。 そして、箕面・桜ヶ丘の「住宅改造博覧会」こそは、住宅の合理化・近代化、さらには中流住宅の普及という課題に、初めて建築家が本格的に関与したことにおいて、まさにメルクマールとして意味をもつものだったのです。

もちろん、こうした住宅改造、あるいは郊外住宅地建設の動きは、関西に限ったことではありません。例えば、大正11年に東京・上野公園で行われた「平和記念博覧会」では、文化村が大きな評判を呼んでいます。 しかしながら、そうした様々な活動の中にあって、「住宅改造博覧会」はひとつの際立った特長を持っています。それは、住宅地としての体裁を整えた展覧会場に、設計コンペ入選作と建設会社の出品作の計27戸の住宅作品が建てられ、驚くべきことに、そのうちの10数戸がいまだに現存し、60年以上経た今日に至るまで、ずっとそこで生活が営まれてきたことです。 このことは、鉄道と一体化した住宅地開発などによって、関西においてはすでに郊外生活のアメニティが成熟しつつあったことを示すと同時に、博覧会の企画者、住宅の設計者、さらにはユーザーまでもが、住宅に対する確かなイメージ、住い方に対する確固たるスタンスを持っていたことを物語っていると言えるのではないでしょうか。

緩いカーブを描く街路、急勾配の瓦屋根、アーチ型の玄関、家具やマントロピース、照明のクラシカルでモダンなデザイン、ステンドグラスから柔らかな光が注ぐ階段ホール・・・。 理屈はともかく、そこには中流階級の進取の気質と洋風生活への限りない夢が確実に脈打っています。

さて、一方で私どもは、企画の検討や諸先生による調査が進む過程で、新たな問題意識を持ち ました。 それはひとつに、当時の生活改善の運動が必ずしも額面通りには定着せず、住宅の形式にしても、「あめりか家」をはじめとするパイオニア達の思惑とは裏腹に、和洋折衷が基本パターンになっていったということです。 大げさに言えば、そこに近代日本のジレンマを垣間見ることができるとうな気がしますし、それはまた、モデルハウスに代表される現代日本の中流住宅の摩訶不思議さにもつながっているように思えます。 いったい私達日本人はどこに住んできたのか、そしてどこに住もうとしているのか―。誰もがユートピアを想った大正時代の夢に立ち返りながら、そんなことを考えてみるきっかけになれば、と思います。

INAXギャラリー大阪




図録・BOOKLET『 大正「住宅改造博覧会」の夢』 (在庫切)
INAX出版が発行する建築とデザインを探検するシリーズ


会 期 (終 了)
ギャラリー大阪
1988年3月〜5月



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