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宮本隆司展
−九龍城砦−

ごあいさつ

INAXギャラリー大阪、1988年6月は宮本隆司さんによる写真展「九龍城砦」をご覧いただきました。 宮本さんは1947年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、建築専門誌の編集部員を経て、フリーの写真家として独立。1986年3月、それまでの建て築かれた写真を撮るかたわらで、建築の終焉ともいうべき破壊と崩壊の衝撃的なシーンを「建築の黙示録」として発表しました。 そして1987年、宮本さんの新たな被写体となったのは、東洋の空中カスバ、魔都香港をイメージとして集約したようなあの「九龍城砦」でした。 香港啓徳空港のすぐそば、飛行機の機体がそのてっぺんをかすめそうな位置にある九龍城砦(ガウロンセンツァイ)。そのカスバ化の原因は、古くからこの砦に駐屯して周辺住民を支配していた清朝の役人の存在を植民地化以降もイギリスが許したことにはじまります。

やがて清朝が滅亡、砦はながく放置され無法化します。そして第二次世界大戦後、再び香港を支配したイギリスが砦の接収を計ったものの失敗、その後は税金のがれの町工場や中国からの難民の住居として、あるいは無免許の医師や歯医者の営業が行なわれる九龍城砦の神話ができあがったのです。

現在の、わずか2.5ヘクタールばかりの土地には、7階から16階建てに、コンクリートの住居群がすき間なくたち並び、巨大な灰色の塊のようにそびえています。ロクに鉄筋の入っていないコンクリートの塊は、隣家をつっかえ棒の役目に上に左右に増殖してきました。

醜悪で劣悪な住環境をどのようにクリアランスさせるかが西欧的近代都市化への一歩として、世界中のいたるところで一様な都市計画がなされていますが、困難な歴史を背負った無数の人々がたどりついた漂着のねぐらの集合体、九龍城砦は、不気味でうす暗く、汚水とむっとする湿気に満ちていようとも、そこでの濃密な人間関係や、生活の最小限の装置、ささやかな装飾や工夫に、不思議な懐かしさと安堵感をも感じさせます。
無数の闇に浮かびあがる九龍城砦の鬼気せまるシーンをぜひ眼にやきつけてください。

INAXギャラリー大阪




注/展覧会図録は刊行していません



会 期 (終 了)
ギャラリー大阪
1988年6月



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