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伊奈英次 展
−人工楽園−

ごあいさつ

INAXギャラリー大阪、1989年8月は伊奈英次さんによる写真展「人工楽園」をご覧いただきました。
1981年の初めての個展「都市の肖像」や伊奈さんのデビュー作になった'85年の「IN TOKYO」と題されたシリーズは、ビルの屋上などの高い場所から東京の街を俯瞰し、巨大都市東京をシャープかつソリッドに捉えた眼が非常に新鮮でした。 その後'87年の軍用アンテナ(空中線)をテーマにした「ZONE」では、アメリカ軍基地の広大な区域にはりめぐらされたアンテナ線を、単なる風景ではなく、ファインダー越しの視覚の中という制約を巧みに生かしながら、その形状を実に美しく描写しました。
いずれも自然の空をダイナミックに画面に取り入れ、都市の無機的なマチュールをとことんクールに写しだしながら、その陰には否応なしに共存する人間をも感じさせる独特な表現は、伊奈さんならではの味わいといえます。

最近の伊奈さんの被写体に対する新たなカメラワークは、視覚の制約の中での更に巧みな表現として異彩を放っています。それは、今までの作品とは全くイメージを変えた、非常に作意的なシーンへの執着ともいえます。対象である花や草、木、野菜などの植物を枯れさせたり、腐らせたりして、その上に黒や白の塗料を吹き付け、均質に皮膜で被います。そのディテールを極限まで拡大し、巨大な印画紙に焼き付けた様は、一種名状し難い世界を感じさせます。

大きく引き延ばされた葉脈や芽やつぼみが、植物というよりも、まるでミクロの集積回路か、細胞やクレーター、遥か遠い宇宙の星雲のようにも見え、それらの対象からは想像も及ばない別の世界が生まれます。
最近作や新作の中からセレクトされた約11点の伊奈さんの作品にご期待ください。

INAXギャラリー大阪





注/展覧会図録は刊行していません



会 期 (終 了)
ギャラリー大阪
1989年8月



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