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建築の彩時記展
−港町・函館こすり出し−

ごあいさつ

函館西部地区の元町一帯を、サンド・ペーパー片手に、はしごとバケツをかかえて雨にも負けず風にも負けず歩きまわるグループがいます。

グループの名は元町倶楽部・函館の色彩文化を考える会(以下、元町倶楽部と略)。 グループが発足したのは1984年。地域に密着したイベントを色々と手がけてきた彼らが、この町の魅力を語りつぐべく、ある研究を始めます。

「開港場としての古い歴史をもつ函館には、戦前に、今からでは想像もつかないような国際色豊かなハイカラな町並みが存在していたのではないか − それを検証すること。」これが、このグループの研究テーマでした。 研究の対象に選ばれたのは明治末期から昭和初期にかけて建てられた洋風あるいは、和洋折衷の木造下見板張りのペンキ塗装された建物です。 元町倶楽部の面々が、古い建物の外壁に蝉のようにはりついて塗り重ねられたペンキの層をサンド・ペーパーで力強くこすっていくと、みるみる、まるで地図の等高線のような円環状の色彩があらわれ、現在の外観が以前には、緑だったり、灰色だったり、白や茶色であったことがわかってくるのです。 さらに戦時中は灰色が多く、戦後はパステル調の明るい色彩が多いこと、また戦前には、公共建造物は青や白や黄のハイカラな色彩だったけれど、民家のモス・グリーンが町並みを形成する主要な色彩であったことが明らかになりました。 建物に刻まれた歴史を色で読みとる、色によって時代の貌が見えてくる − 元町倶楽部の人々は、この円環を"時相色環"と名付けました。
本展では、元町倶楽部の活動のドキュメントを函館の地図や歴史、調査対象の建物の写真や模型、こすり出された"時層色環"の実物10数件、現地取材したビデオやコンピューター・グラフィックによる建物の色彩変遷のシミュレーションなどでご紹介しました。

私たちの身のまわりの、さまざまな歴史を秘めた建物たち。 取り壊されて、そこにあったことも、どんな時代を経てきたかも忘れ去られてしまう名も無い建物への愛着が、町並み保存運動をも続ける元町倶楽部の、このような独自な活動の根源となっているといっても過言ではないでしょう。

本展では多くの方のご協力をいただきました。関係各位にこの場を借りて御礼申上げます。

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図録・BOOKLET『 建築の彩時記
INAX出版が発行する建築とデザインを探検するシリーズ




会 期 (終 了)
ギャラリー1 ギャラリー大阪
1990年11月〜1991年1月 1991年2月〜4月



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