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靴のラビリンス
−苦痛と快楽−

ごあいさつ

人類の直立二足歩行の歴史が約360万年前に始ったのに対し、はきもののそれは約4000年前。 はきものの起源は、熱く灼けた砂や、冷たく凍った大地、害のある動植物から足を守るためといわれます。 しかし裸足で生活していた長い時間を考えると、ほかにも理由や目的があったのでしょうか。

現存する最古のはきもの、古代エジプトのサンダルは、温暖な地域に生まれた開放的なはきものの原型で、権威のシンボルとして貴族や僧侶などにだけ着用が許されていたようです。 北米インディアンのモカシン(一枚皮で足底から甲を覆うもの)に原型がみられる閉鎖的はきものは、この時代には民衆用であり、時代を経て靴の主流となっていきます。

ビザンティン文化(4−13C)隆盛以降、装飾性をました衣服や靴は、地位や富を示す重要な手段として流行を追い、さまざまなデザインを取り入れるようになりました。ヒールは16世紀末に登場し、バロック(17C)に全盛を迎えます。

フランス革命や産業革命を経て、ファッションの中心はようやく貴族から庶民に、そして男性から女性へと変化しました。 さらに1829年ミシンの実用化とともに靴も機械製造されるようになります。 そして、20世紀に入りスカート丈が短くなるととたんに女性の靴はさまざまなデザインをくりひろげます。

一方、はきものを機能・性格からみると、"footwear" と "footgear" に分けられます。 前者が衣服、ファッションとしてのはきものであるのに対し、後者は道具としてのはきものだといえます。 田の代かきや稲刈りの田下駄など日本古来のはきものは多くが後者に属します。 しかし現在では、私たちの身の回りから姿を消しています。

これと反対に、ますます用途が分化し明確になっているはきものには、スポーツシューズが上げられます。第二次大戦後のプラスチックに始まり、ナイロン、ウレタン、グラスファイバー、カーボン、セラミック等の新素材の開発は、スポーツ用具にめざましい発達をもたらしました。

本展では、日本のはきもの、世界の靴のなかからその変遷を表す代表的なものを、その背後にある文化的、社会的な背景を含めて紹介しました。生活習慣や文化の違いが文字通り「足元」からわかってきます。また、長さと幅で72種類を数える現在の靴の木型(現在はFRP製)や、競技によって底面のピンやすべりどめの形、数、位置、大きさなどが違う30種類程のスポーツシューズは、現代の靴のいろいろな表情を見せてくれます。

今展では多くの方のご協力をいただきました。関係各位にこの場を借りて御礼申上げます。

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図録・BOOKLET『 靴のラビリンス』(在庫切れ)
INAX出版が発行する建築とデザインを探検するシリーズ



会 期 (終 了)
ギャラリー名古屋
1992年2月〜4月



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