人間の五感の中の視覚と聴覚。
一般に視覚は目を通してものを見、聴覚は耳を通して音を聴く感覚のことをさしますが、時として音で風景を体感していることがあります。
例えばテレビの野球中継のホームランの音と歓声や、相撲の寄せ太鼓やぶつかり会う力士の音を耳にすると、白熱した野球場の興奮や土俵を囲む升席の賑わいの風景が瞬時によみがえってきます。
人間は目でその景色を見ながら同時に耳でも音の景色の中に生きているのです。

日常、人間は耳に入ってくるすべての音をストレートに聞いているように思いますが、実はその中でも自分が意識した音を選択し強調して聴くという特性を持っています。 ですから都市や建築の中で録音した音をあらためて聴いてみると、意識下になかった音の数々が再生されて意外な発見と新鮮な驚きを感じます。
私たちの生活を取り巻く空間にはどのような音がひそんでいるのでしょうか？

会場ではローランド株式会社のご協力により "RSS(ローランド・サウンド・スペース)" という音響機材で音を強調した音源により、水族館・地下鉄・社寺・銭湯や市場など様々な都市空間の音の世界を映像と合わせて紹介し、都市にひそむ音の臨場感を体験していただきます。<

タイトルの「耳の建築」とは「耳で建築」を感じること。
今までもっぱら視覚のみで語られてきた建築を耳を通して探って行こうという初の試みをこの場で体験していただければ幸いです。

尚、本展に際し、多くの皆様のご指導とご協力を賜りました。改めて、厚く御礼申し上げます。

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