gallery2

2001年8月のINAXギャラリ−2 Art&News
INAXギャラリー特別 展
− 10daysセレクション―予兆のかたち 2 −

瀧健太郎展/ 会期:2001年8月1日(水)〜11日(土)

牡丹靖佳展/ 会期:2001年8月21日(火)〜8月31日(金)

会期:会期中無休

Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。



瀧 健太郎 ― 純粋時間装置

瀧 健太郎の映像から、かすかに匂いのようなものを嗅ぎ取った。
本来映像には匂いがない。だから映像表現は、臨場感の再生をめざしてぬめぬめ、つやつやとした誘発画像に懸命だ。だが、テレビを長時間見続けられるのは、無臭だからだ。ラーメンやシャンプー、ビールや調味料の匂いが画像から流れてきたらたまらない。テレビやパソコンや携帯メールが流行るのは匂わないからだ。
匂いは心身を揺さぶる。その二律背反の映像表現にあって、瀧は作品に、天候の具合で空気が微妙に無限に変化するような、模糊としているのがリアルであるような感覚を練り込んでいる。 展覧会を決めた作品に、画廊で特大のゲーム遊びをするようなものがある。画廊の天井と床で、立体幾何学形がどんどん変化するのだが、その驚かせ方に驚いた。幾何学形はコンピュータの得意芸だが、思いがけない変形ぶりが彼のセンスと才能で、[かたち快楽]に浸った。人間の動きに図像が反応するのは、目新しいものではない。しかし自分だけのためにと感じさせ、多くの人の心を掴んできたゲームの手法をつかって、瀧は自分の作品として自然なふるまいをしていた。 ゲームに夢中になるのは、私だけのためにこの画像がここにあり、いまゲームは生きていると感じられるからだが、それ以上に、純粋時間にいるような空白の幸福感があるからだ。しかし瀧は、純粋時間のわずかな寂しさに気がついて、やわらかな瀧流の純粋時間をつくった。

牡丹靖佳 ― 隠して見せる装置

だまされるよろこびがあった。 牡丹靖佳の作品は、昔風な大学ノートに綴られていた。 プランや展示の記録が、カラープリンターで印刷されているノート。 どう見ても市販の糸綴じのノートだ。 プロが製本したように、細工の手跡は見えない。不思議でたまらなくて、会ってみた。
細工していた。まんまとだまされた。目の前で鮮やかな手口の詐欺にあったようなおかしさで、笑った。
今回はINAXギャラリーの空間をオフィスに見立てるという。[INAX文化推進部 エンピツ課]となるらしい。 古びたスチール家具や什器のあちこちにエンピツや、額に入った作品などが見え隠れする。 瀧と牡丹に共通するのは、リメイクするちからだ。リメイクとは発見能力である。 [おもしろ]表現にはおとな版とこども版があると思うが、牡丹の表現は、こどもだましではなく、おとなだましだ。 こどもの主張は正しい風の、[若年感覚正しい主義]ではない。
オフィスやノートという枠を借り、その見立て装置を介して、さまざまなものを愛着と冷静の視線で見つめている。 装飾額入り具象画や、黄色いエンピツを随所に示しながら、隠すと見たがるという永遠不滅の心理で観客を導いていく。 インスタレーションという形式は気付きの仕掛けだと思うが、彼と私たちにとっても、もうこうした仕掛けなくしては何かを見ることができないと示そうとしている。
牡丹靖佳という装置を通して、概念の対立や二分法ではない感覚の層が見えてくる。


入澤ユカ
(INAXギャラリーチーフディレクター)




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牡丹靖佳 展 TOP PAGE 牡丹靖佳 作家略歴

INAXギャラリー2
2001年の展覧会




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