gallery2

2003年8月のINAXギャラリ−2 Art&News
INAXギャラリー特別展
− 10daysセレクション―予兆のかたち 5 −

山田幸則 展/ 会期 : 2003年8月1日(金)〜9日(土)
森田多恵 展/ 会期 : 2003年8月20日(水)〜29日(金)
休館日:日祝日

Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。


山田幸則という事件

スゴイ技術だと思った、その山塊に。何度も映像で見たことがあるアルプスやエベレストの山塊に似ていた。 絵画作品の中には、山や山塊はたくさん描かれてきたが、なぜ彫刻家には、山塊がモチーフとならないのだろうかと、 とっさの大発見のように思った次の瞬間に、「最長部110、最高部54cm」というサイズと、 「展示会場のほこり」というキャプションを目にして驚きが沸騰した。驚きがほこりとともにやってきた。

濃いグレーの山塊と稜線のかたちは、ロンドンの高い天井の広い空間の煤けた板張りの床に、ひっそりと屹立していた。 なぜ人は、埃で世界をかたちづくることができるのだろうか。 いや人ではない、山田幸則に、神からほこりで山を作り出せという使命が下されたとしか思えない。 ほこりが発見と創造を命じるか。神が大げさならば、なぜ山田幸則という作家に、唯一無二の表現の事件が起こるのか。 山田はすぐに、小麦粉でも白い山塊をつくりはじめる。 パンになる小麦粉の粒子とほこりの粒子の形状や重量が酷似していることを、触感で知るようになるのは理解できても、 ほこりという粒子や小麦粉をふるって積もらせて、塊やエッジと時間と重力のかたちを作り出してしまう、 山田のゆくたてこそが驚異で事件だ。
白い山塊は光と影をまとい神々しい。山塊という写実を埃や小麦粉という 思いもかけない物質で表出させる超感応作家、山田幸則という事件に遭遇した。




森田多恵という事件

私が作品に出会う現象をことばで言いあらわすと、閃光のはやさでからだの中に、小石のようなものが入ってきて、 ずっと後になってもその小石を取り出せば、作品のことばを紡ぎ出せる。すぐれた作品とは、たった一枚の写真の中にも、 深さや豊かさが写ってくる。だが映像作品の場合は少し違う。ファイルや写真には、映像の光はうつらない。

森田の作品が映像の作品であることはすぐわかったが、どんな映像かを問う前に、画廊空間の箱や球体のようすに惹かれた。 大掛かりな装置をもった占い師の部屋のようだった。ファイルにはこの映像の構造が簡潔に説明してあった。 「実物投影機」ということばに目がとまった。映像界には、こんなことばがあるのだろうかと思いながら、 あらためて「投影」ということばを辞書でひいてみた。"(1)物の姿・影をうつすこと (2)ある影響が現れること" 実物を写すとは書かれていないが、物の姿・影をうつすことを投影というのかと、姿と影が一緒になっていることに首を傾けて作品に導かれた。 森田多恵は、まず小箱の中に空間の要素のドアや階段をつくりあげる。その箱に強い光を当てて、 少し先におかれた球体に小箱の内部を投影する。薄暗い空間に置かれた真っ白な球体が占いの水晶玉を連想させ、 あっという間に暗示にかかる。写し出されるのはドアや階段。見慣れたものが、水晶玉から湧きでてくるように写りだし、 身投げするように引き込まれていく。
対立や内在や倒置などと、手法や構造をことばで言うのは簡単だが、 映像というリアルに、ミクロとマクロ、現実と幻視を直列につないだ超感応作家、森田多恵という事件に遭遇した。

入澤ユカ
(INAXギャラリーチーフディレクター)




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