gallery2

2004年1月のINAXギャラリ−2 Art&News
配島庸二 展
― 1月のクローンド・ヴィーナス ―

会期 : 2004年1月5日(月)〜1月28日(水)
休館日:日祝日

Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。


1月のクローンド・ヴィーナス

配島展 配島展
配島庸二は、彼自身が長く編集者であり、画家であり、さまざまなものの渉猟者であり、観察者であり実践者であり、それらに多くのことばを残している。だから、彼自身の語りを引用することからはじめよう。
「私の絵の描き方というのは、先ず、以前に描かれた絵の一部を切り取って、それを新しい紙に乗せて、その切れ端の中に込められている様々な絵画的遺伝子を読み解きながら、そこから新しい作品を描き継いでいきます。描いているうちに遺伝子的なものが符合して、傍らにあった別の作品とコラージュされて、全然別の生命を得ることも珍しくありません。−中略−そして作品の大方は展示が終わったり、或いは、或る飽和点に達したとみるや、片端から解体されていきます。」
配島の作品を見ていると、とても気が楽になる。それが2度目の展覧会の理由かもしれない。つくって解体し、一部が誕生のはじまりの細胞になって、また新たに作品が生まれ、最後の最後には、出自も不分明な、線や色彩による迷路のような暗号のような断片が少し残るだけというイメージがふくらみ、あふれるものと映像の中で溺れそうになっている私にとって、配島こそ現実と夢想をまるごと作品化する術を獲得した人のように思えた。飛ぶ鳥あとを濁さぬ画家、混沌で豊饒な無一物画家はダンディだ。そして近未来、残された断片を頼りに、作品が未来に読み解かれるものとして21世紀初頭にうまれた「消える絵画」の先駆者になるかも知れないと思うと、愉快ではないか。配島の素材や線や色彩やかたちの断片と、作家自身の文明文化科学哲学森羅万象への傾きを分析し感応し、その一片のセルに「未来の配島庸二」とその作品を出現させる人々も出てくるように、誕生と死がほがらかに、ゆっくりと巡り続けていく作品なのだ。
作品は、いま目の前にあっても変容の只中にある。タイトルがあるのに、あすには別の作品の中に棲みついて、別のものとして出現する。それは、生きものすべての大きな循環の中に、配島の作品があるということだ。
そして配島からは、簡潔な生き方をしてきた、私たちの父祖の人間像と所作も見えてくる。始末する絵画による、始末される爽快な感覚。今日の営みのかすかなしるしが明日の始まりで、作品が放つ光や波は、私たちの心身にとけるように降りつもるだけ。いきものの一瞬の様相をした作品という名の結晶体は、あるがままのきれいなかたちをしている。
配島の近年の作品は「クローンド・ヴィーナス」と呼ばれている。あの線は、あの色は、あのかたちは、空の、雨の、食卓の、野菜や魚、書く手紙とため息や、書物や石鹸のかおり。
「クローンド・ヴィーナス」とは、どんな度量衡でもはかれなく、永遠に悩ましい。以前に描いた絵の一部を切り取って新たな絵がはじまるという、作品の完成が一瞬であることとは、配島の生きていることを捧げた、なにかへの供物なのだ。新年の、祝いの供物が画廊を満たす。

入澤ユカ
(INAXギャラリーチーフディレクター)




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