INAX PUBLICATION

INAX出版 営業日誌

INAX出版 の書籍が置いてある全国の書店をご紹介します
(在庫の有無は書店にご確認下さい)。
このページは、INAX出版・営業担当者が毎月連載します


幸福書房

2004年07月 ご紹介

出版社が新刊を出す直前、書店さんからの予約冊数をカウントします。 営業時に頂いたり、電話やFAXだったり、取次週報(本の問屋が書店に配布している新刊情報)を見ての注文だったり。 以前からいつもその紙の束の中に、幸福書房の名がありました。 書店名簿を引くと、立地は駅前で坪数20。最初はお客様の指定注文かと勝手に思っていましたが、どうやらそうではないと気付き、97年5月に訪問して以来お世話になっています。

店舗外観

私が回っている首都圏の営業先の中で、おそらく最も小さな書店さんです。 念願の取材を電話で申し入れた時、店長さんは「3時の昼寝時間以外ならいつでもどうぞ」と快諾して下さいました。 朝の9時から終電近くまで、ご兄弟とアルバイトで店を切り盛りしているので、その休息は不可欠なのです。

店内

小田急線代々木上原の駅に着き、改札を抜け、階段を降りて右に曲がれば、店舗は目の前です。 取材時は昼の12時前、ちょうど路肩に停めた車のバンから段ボールがせっせと運ばれているところでした。 後で聞くと、江戸川橋と神保町の取次(本の問屋)から直に仕入れてきたばかりの新刊とのこと。 取次が自動的に書店に配るいわゆるパターン配本は極力お断りしている(でないと店には不向きな本がきてしまう)ので、本日の新刊案内をチェックし、現金を握り締めて朝一番で問屋に通い、新刊や欲しい本を入手します。 「数は極々限られているので、毎朝他の書店さんとの奪い合い」と、仕入れ現場は熾烈ですが、その甲斐あってこそ、この不況な時代を生き延びてきたといえるでしょう。

店長さんはこの道27年、個人的に好きなのは文芸書。 新刊時には1点2冊で仕入れ、背表紙を見せて棚に並べます。 「クセなんです。スペースの関係もありますが、その方が見やすいので」。 しかし確実に置ける点数は半減するので、そこが常に苦慮のしどころです。

店内

お客様の殆どは地元の常連の方です(中には著名なイラストレーターや漫画家、指揮者のお名前も)。 駅前とあって夜の7時頃が最も忙しくなりますが、撮影中は「こんにちは」と挨拶が交わされる声がよく聞こえ、アットホームな雰囲気でした。 周辺に学校が無いので学生の数は少なく、年齢層はやや高めです。 昼休憩中と思しきサラリーマンの方がスリッパ履でフラリと入って来る姿も。 自然、男女を問わず地元の方が必要とされる本に絞り込まれたコンパクトな棚になっています。 旅行、山岳やカメラなど趣味関連書のほか、ビジネス書は意外にボリュームがありました。 各種情報誌やコミック、エッセイ、実用書、文庫、新書など。 映画音楽の棚にはビートルズの絵本『イエロー・サブマリン』が。 ほかにも珍しいところでは『週刊デル・プラド・コレクション 世界の航空機100年物語』のバックナンバーが1〜5まで揃っていて驚きました。 他にも『同RACING CAR』1〜9、『DOLL HOUSE』の19〜24も在り、探している方には貴重な在庫です。

店内

「書評に載ったり、いわゆる超ベストセラー本はあまり動かない」そうです。 雑誌では店に入ってすぐの平台に積まれた音楽雑誌『Stereo Sound』『Audio Accessory』が昔から何故か売れます。 その並びに『GA』や『室内』と混じってINAX出版の10+1(TenPlusOne)やBOOKLETの新刊が置かれています。 バックナンバーはありませんが、新刊はいつも5冊前後置いて頂いており、『10+1 No.35』が発売から2週間めで4冊売れ(棚に残っていたのは1冊だけ)、慌てて補充しました。 特集によっては10冊以上動く場合もあり、都心の大型店に負けない数字です。 「建築書が好きなお客様は活字に慣れていて基本的に本が好き。もしかしたらウチの文芸書の棚とリンクしているのかも?」と店長さんは分析されます。 取材中に様子を伺っていると、30代前後の男性の方が手に取って(パラパラ…)とページを捲っていました。

店内

店長さんは「町の小さな本屋さんが好きで、よく見に行く」そうですが、「経営が厳しいのか上の方がスカスカに空いている状態の棚を見ると哀しくなってしまう」とため息。「今は昔と違って新規で店を構えるのは大変だけれども」、それでも「書店は独立して店を構えてこそ、面白みがあってやりがいのある仕事なのだから、大型書店でバイトしている若い人達には頑張って欲しい」と、駅前の変遷を見守ってきたレジからエールを送ります。
来年でオープン25周年になるこちらも以前は別の書店さんだったそうで、その名残り(緑色の非常口のサイン)が趣味・娯楽の棚の上に残っているのはご愛嬌です。


幸福書房

東京都渋谷区上原 1-32-19 (〒151-0064)
TEL&FAX : 03-3469-6317

営業時間 : 9時〜翌0時半
無休



ご紹介書店 一覧
INAX出版 HOME CULTURE HOME

本ウェブサイトからの無断転載を禁じます
Copyright(C) INAX Corporation

文化活動へのご意見、ご感想、お問い合わせ等はこちら
E-mail: xbn@i2.inax.co.jp