風と建築 展 |
Wind and Architecture 解説 |
風土に根ざした「風のかたち」 日本はモンスーン地帯にあるため、季節ごとにさまざまな風が吹き、さらには地形も複雑であるため、地域ごとに局地的な風も吹きます。 ここでは、風との関わりが強い地域で出来上がった「風のかたち」をいくつかご紹介します。 (会場写真:INAXギャラリー大阪) |
上大沢・大沢の「間垣」(石川県) 地域ごとに風除けの工夫はさまざまだが、原初的ともいえる素朴な佇まいを見せるのが、能登半島の北西端にある大沢町と上大沢町の「間(ま)垣(がき)」だろう。細い竹を束ねた高さ5mほどの垣で集落を囲んだ、半永久的な風除けだ。竹の城砦ともいえるが、威圧感がなく、自然に溶け込んだやさしい印象を与える。風が吹くと竹の小枝が揺れ、かすかに隙間もあるつくりだが、これは風を完璧に遮断するのではなく、少し通しつつ、全体として風の力を弱める働きがある。風に対峙するのではなく、やんわりと受け入れる。自然に逆らわないで生きる知恵だ。 11月下旬からこの一帯には「鰤(ぶり)起こし」とよばれる北西季節風が大きな雷鳴とともに吹き荒れる。凄まじい唸りをあげて竹垣に吹きつけ、虎落(もがり)笛(ぶえ)と呼ばれる笛のような音を響かせる。慣れている土地の人にとっても不気味な音で、間垣はこうした風の唸りを弱める防音の役目も果たしているのだ。 また乾燥した竹の間垣は、水分をたっぷり含んだ海風の湿気を吸収してくれ、夏の夕刻に照りつける厳しい西日を遮ってもくれる。いっぽう間垣の難点は、火事に弱いということ。乾燥した竹にいったん火がつくと、またたくまに燃え広がる。そのため防火については異常なまでに気を遣ってきた。長所と短所をふくめ連綿と続いてきたこの地での暮らしの知恵が、この間垣にしっかりと受け継がれている。 |
間垣 撮影 : 西山芳一 間垣 撮影 : 西山芳一 会場写真 |
風の小窓 高温多湿な日本のすまいには、風通しをよくする換気口が欠かせません。 とくに重要なのが屋根裏と床下です。この小さな換気口にはさまざまな意匠が凝らされています。 |
■屋根裏の換気口 上段左から宮城県湧谷町、兵庫県神戸市、青森県板柳町、中段左から奈良県大宇陀町、茨城県八郷町、奈良県大宇陀町、下段左から京都府美山町、香川県大川町、秋田県秋田市 |
■床下の換気口 奈良県橿原市今井町 撮影 : 西山芳一 |
自然の風を活かした現代の建築 夏も冬も3段の引違い窓で風を呼び込む 屋根越しに見える隣家の窓にならって考えられた特徴的な開口部は、伝統木構造の貫材を敷居鴨居とした3段窓である。天井から床まで全面の木の引違い窓は、日々刻々の暮らしの中で細やかに風を調節することができる。この家では、すべて湿気や熱を出し入れし、暑くても蒸さない寒くても冷えない材料を用いている。このように重厚な自然素材に包まれているからこそ、夏の風通しはもちろん冬の風通しとしての隙間風も受け入れることができる。 |
■市居博(建築家)自邸「シーダ・バーン」 設計:市居博、1998年竣工 会場写真 |
呼吸する建築 ポーラス型集合住宅の提案 この提案のテーマは「ポーラス・エアラッピング」である。ポーラスとは多孔質を意味し、穴をたくさん開け、風をうまく流れるようにしている。海中に棲むサンゴや海綿は密集していて水をよく通す。それと同じように空気をよく通し、空気で包まれた建物にするために、スポンジのように中空部分を多く設けて、外気が建物内をよく通るように工夫している。 |
これは日本学術振興会が行ったプロジェクトで、計画・構造・環境の専門家が集まり、高密度居住都市で環境に負荷を与えず、高温多湿気候に適応する住宅のプロトタイプをつくるというもの。2001年度の日本建築学会設計競技で最優秀賞を受賞。 プロジェクトリーダー:村上周三(慶応義塾大学) プロジェクトリーダー:加藤信介(東京大学 生産技術研究所) デザイン:クトリーダー小嶋一浩(代表者+プロジェクトチーム) 「ポーラス型集合住宅・東京モデルの模型」(会場写真) デザイン:小嶋一浩(代表者+プロジェクトチーム)、所蔵:東京大学 生産技術研究所、協力:株式会社竹中工務店 |
関連リンク 象設計集団 ■ http://www.zoz.co.jp 会場で展示している「多治見中学校」を紹介。 シーラカンスアンドアソシエイツ ■ http://www.c-and-a.co.jp |
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