INAX PUBLICATION

INAX出版 営業日誌

INAX出版 の書籍が置いてある全国の書店をご紹介します(在庫の有無は書店にご確認下さい)。
このページは、INAX出版・営業担当者が毎月連載します


GEN建築・芸術書房

2005年3月 ご紹介

ENTRANS

福岡市の中心街である天神から延びる西鉄福岡駅から一駅。薬院駅で下車し、西鉄の高架下を道なりにまっすぐ5分ほど歩いたところにGEN建築・芸術書房はあります。でも、初めてお店を訪れるという方は、なかなか書店らしきものが見当たらず、戸惑うかもしれません。 なぜなら、GEN建築・芸術書房は店舗を持たない本屋さんだからです。

GEN建築・芸術書房は、マンションの1室をオフィスとしています。玄関を入り、小さなエントランスを通ると、そのお部屋には壁いっぱいに本棚が置かれていて、まるで大学の研究室のような雰囲気です。 INAX出版の書籍も、『BOOKLET』や『10+1』を中心にこの本棚に揃えられています。その中には、INAXが伊奈製陶と名乗っていた時代の豪華本『美の彷徨テラコッタ』が収められていたりと、古くからのお付き合いであることを改めて感じさせられます。店主は江口敬子さん。受注から配達まで、全てお一人でこなしています。 その隣りの部屋は、敬子さんのご主人である正利さんが経営されているアトリエGENという設計事務所になっています。

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1981年、正利さんが東京でお勤めされていた大手建設会社を辞められ、地元福岡に移られたのをきっかけにGEN建築・芸術書房とアトリエGENは誕生しました。 その当時、福岡には建築書を扱う書店はほとんどなく、また、建築界の事情が東京とあまりにも違うことにギャップを感じ、「福岡の建築界をもっと活性化させて、地元の建築仲間と同じ言葉で語り合いたい」という想いから書店を始められたそうです。

GEN

とはいえ、当初はお二人とも、書店経営に関してほとんど知識がありませんでした。出版社からの本の取り寄せ方から、発注する書籍の冊数まで、全てが手探り状態で、いろいろと苦労は絶えなかったといいます。顧客も、福岡の電話帳に載っている設計事務所に手当たりしだいに電話をかけて築き上げていきました。 また、「どこの書店でも手に入り、使い捨てられる本ではなく、個人が手もとにずっと大事に置いておけるような本をお届けしたい。自分が良いと思う本だけを扱いたい」という想いも、なかなか地元のお客様には受け入れられなかったそうです。
今でこそ、福岡には丸善、紀伊国屋、ジュンク堂といった大型書店が軒を連ね、東京とほとんど変わらない品揃えがなされていますが、当時は東京で評判の良い本でも、福岡では書評などである程度世間が認めたものでないとまだまだ売れないし、売れたとしてもその数は決まっているというのが現状でした。 当時を振り返って、「あのころは大量の在庫を抱えてしまって、本気で夜逃げしようかと思ったんですよ」と敬子さんは笑いながらおっしゃっていました。

GEN

現在は、最初に作り上げた設計事務所の人脈をもとに、独立されたり、転職されたりした方たちへとネットワークを広げ、約100件ほどの設計事務所を回られています。 しかし、建築業界はどこも厳しい時期を迎えており、書籍を購入する余裕のない事務所も多いそうです。そのような場合でも、良い本、旬の本を少しでも多くのお客様に読んでもらうために、分割払いで融通したりと、地域に根ざした書店だからこそできるサービスを心がけています。

また、アトリエGENでは「建築家の啓蒙は、出版社や書店にある」という理念のもと、福岡での建築仲間を増やす活動として、正利さんを中心とした勉強会も開かれていました。 そこに集う方たちは、ゼネコンで活躍されていた若手社員や、建築を勉強する学生さんなど、その立場はさまざまでしたが、実務の勉強や作品の批評会を行なったりしていたそうです。 学生さんの中には、京都や大阪から出向いていた方もいらしたとか。 活発な意見交換の場として盛り上がっていたのだろうと思います。

アトリエGEN

このような勉強会は、参加者が福岡を離れてしまったり、アトリエがお忙しくなってしまったこともあり、今はもう開いていないとのことです。 ですが、こうした方たちが福岡を離れ、各地でアトリエGENでの経験やGEN建築・芸術書房で出会った書籍を伝え、めぐりめぐって新しい建築仲間を福岡にもたらしてくれるのも、また楽しみなのだそうです。 それは、東京ではできない地方都市ならではのコミュニケーションの取り方であり、ネットワークの広げ方だともおっしゃっていました。

正利さんは企画・建築設計もされますが、「いろいろな変更が生じたり、工夫次第でまた新しいものが生まれたりする現場が何よりも楽しい」とおっしゃる行動派。いっぽう敬子さんは、「営業に行っても、お客様が欲しいと言わない本や、自分が良いと思えない本を『買って欲しい』とは言えないんです」とおっしゃる控えめな方で、対照的なお二人です。ですが、「自分たちの役目は現場に足を運んでお客様と接し、建築とはいかなるものかを本を通じて伝えること」を原点とするお考えは、お二方から同じように伝わってきました。
GENとは、現場のGEN。また原点のGENなのです。


GEN建築・芸術書房

福岡県福岡市中央区平尾1-7-20 平尾ハウス105(810-0014)
TEL : 092-524-2535
FAX : 092-524-2170

営業時間 : 9時〜17時(配達で留守がちのため、要連絡)
休業日 : 日曜祝祭日


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