INAX PUBLICATION

INAX出版 営業日誌

INAX出版 の書籍が置いてある全国の書店をご紹介します(在庫の有無は書店にご確認下さい)。
このページは、INAX出版・営業担当者が毎月連載します


紀伊國屋書店 札幌本店

2005年10月 ご紹介

店舗外観

約2年ぶりに北海道の書店をご紹介します。
2003年、札幌駅にステラプレイスという大型ショッピングモールが完成して以来、隣接する大丸百貨店の集客効果も手伝って、駅周辺はいつも大勢の人でにぎわっています。これらの商業施設と通りを一つ隔てた所に、今年4月に新しい書店がオープンしました。それが、今回ご紹介する紀伊國屋書店札幌本店です。1971年来、札幌本店は札幌雪祭りで有名な大通り公園のテレビ塔前に店舗を構えていましたが、4月に駅前に移転オープンし、新たなスタートを切りました。1Fにフェアコーナー・雑誌・マンガコミック・文芸書・地図・趣味実用・DVDなどの一般書籍、2Fに洋書・医学書・自然科学・社会科学・芸術・児童書・語学参考書・人文科学などの専門書を取り揃えた売り場は、面積1,300坪、総在庫数80万点という品揃えで、紀伊國屋書店の中でも新宿本店や新宿南店に並ぶ大きさです。

お店を訪ねてみて印象的なのは、明るく開放的な空間です。左側の入口を入ると、左手の壁面にはずらっと雑誌を面陳できる背の高い什器が並んでおり、その迫力に圧倒されます。しかしながら、視線を遮らないくらいに高さを押さえた棚や、3メートルは越しているであろう高い天井、そしてお店の前面が総ガラス張りになっているためか、圧迫感はまったく感じられません。また、ところどころに置かれたガラスのショーケースやジグザグとくねるようにデザインされた什器など、店内からはいわゆる旧来の紀伊國屋書店とは一味違ったテイストが感じられます。
というのも、こちらの新店は、シンガポールの建築家タン・カイギー(Tan Kay-Ngee)氏が手掛けたデザイン店舗なのです。彼は、紀伊國屋書店のシンガポール店やクアラルンプール店、シドニー店などもデザインしており、国内では札幌本店が初の作品となります。

店内には、いたるところに彼のアイデアが活かされています。面陳棚は、お客様が本を取り出しやすいように上の段になるほど手前に倒れかかるように傾斜がつけられていますし、レジのサインとしては、コインをイメージした円盤状のオブジェが天井から吊り下げられ、遠くからでもレジの位置がすぐわかるように工夫されています。また、アイランド型の什器の側面に見られるハの字型のラインは着物の襟のイメージ、フロア全体に縦、横と変化をつけて並べられた棚は畳のイメージというように、日本を意識したユニークな発想も取り入れられています。タン・カイギー氏は、棚に本が入り、お店がオープンしてからも何度か来店され、什器のレイアウトや書籍の見せ方についても熱心にアドヴァイスされていかれたとのことで、建築家としてのこだわりが窺われます。

面陳棚
傾斜のついた棚には襟のデザインが
レジサイン
コイン型のレジサイン
児童書コーナー
回転する時計(左奥)と『ちびくろさんぼ』

このようなデザインは什器だけでなく、書籍のカテゴリーをそれぞれのカラーで区別する空間作りにも及んでいます。哲学・思想など人文科学のコーナーは聡明感のある水色、自然科学のコーナーは宇宙を思わせる濃紺、芸術のコーナーは面陳された美しい装丁が映えるグレーで統一されており、その空間にいるだけでも何か新しい発見ができるのではないかと、じっくりと本探しに没頭してしまいそうです。一方、児童書の売り場には、くるくると回転する時計が立てられ、復刊して話題となった『ちびくろさんぼ』のぐるぐる回るトラの表紙とあいまって、ポップで楽しいコーナーが演出されていました。

苫小牧高校 斬新な空間でリニューアルオープンをした札幌本店ですが、取材時に売れ筋を伺ってみると、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』やリリー・フランキー著の『東京タワー』、そして映画化もされ、現在公開中の『NANA』、『チョコレート工場の秘密』など、東京と変わらないベーシックなラインナップです。とはいえ、8月第5週(8月29日〜9月4日)のランキング1位に『奇跡の連覇駒大苫小牧熱闘甲子園2005夏』(北海道新聞社)が食い込んでいるところなどは、北海道という土地ならではの動きだと思いました。ほかにも、札幌郊外にモエレ沼公園が7月にグランドオープンした時には、GAやCasa Brutus、エクスナレッジのイサム・ノグチ特集号はもちろん、『モエレ沼公園ガイドブック 2004-2005』(企画・編集/札幌テレビ放送株式会社)が建築書としては良く動いたということですし、知床が世界遺産に指定された時も、知床関連書籍のフェアが組まれました。
モーリー また、北海道の自然を紹介する雑誌『モーリー』(北海道新聞社)が雑誌コーナーと自然科学のコーナー2箇所で平積みされているなど、東京の書店では知りえない書籍と巡り会えるのは、地方営業の醍醐味だと思いました。こうした北海道独自の特色は2Fに併設されているギャラリーにも反映されており、取材でお伺いした時は「倉本聰の富良野塾パネル展」が開催されていました。こちらのギャラリーでは、これからも北海道で活躍されているアーティストの発表の場を提供していくそうです。
レジ前フェア棚

さて、INAX出版の書籍は自然科学の建築書コーナーと、芸術の建築美術のコーナーの2ヶ所に分けて、ほぼ全点取り扱って頂いています。現在は、新刊以外は書棚に1冊づつ収められているという状態ですが、担当の方が2Fレジ前の面陳棚を通りかかった時に言ってくださった「ブックレットのフェアをこの棚でやったらきれいでしょうね」という何気ない一言は、札幌の書店と東京の版元と遠く離れてはいますが、また一つ、頼もしいすてきな本屋さんができたことを実感し、嬉しく思いました。
札幌駅周辺は、紀伊國屋書店の他にも旭屋書店や三省堂書店など、大型書店が競合している地域です。そのため、書店員さんにとっては試行錯誤の日々が続くことと思いますが、独自の特徴を打ち出していく書店を訪ねることは、お客様にとっても楽しみなはずです。今後の書店活性化に期待したい札幌です。


紀伊國屋書店札幌本店

〒060-0005
札幌市中央区北5条西 5-7
sapporo55
TEL:011-231-2131
FAX:011-241-0526

営業時間:10:00〜21:00
休業日:なし
紀伊國屋書店ホームページ:http://www.kinokuniya.co.jp/


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