INAX PUBLICATION

INAX出版 営業日誌

INAX出版 の書籍が置いてある全国の書店をご紹介します(在庫の有無は書店にご確認下さい)。
このページは、INAX出版・営業担当者が毎月連載します


青山ブックセンター福岡店

2006年04月 ご紹介
店舗外観

「福岡に行くことになったんだ」と、店長としての異動が決まったばかりの渡辺さんから聞かされたのは、2005年7月20日、青山ブックセンター(以下ABC)が劇的な復活を果たした記憶も未だ新しい頃でした。 オープンまでたったの2カ月と知ってさらに驚いたものですが、見事9月22日にオープンを果たし、ABCとしては九州初進出、都区外にも初の出店とあって、話題を集めました。

店舗は雑居ビルだった建物を改装し、1〜3Fが書店、4Fがギャラリー、5Fは事務所になっています。 場所は天神地区と大名町との間、西鉄グランドホテルのベーカリーが向かいに見えます。 親不幸通リを挟んだ大名町は、ブティック、カフェ、有名ラーメン店のほか、料亭やお屋敷跡を改造したレストランなど、幅広い年齢層に対応したお洒落 なショップが集中しているエリアです。 その立地条件を反映し、ABC福岡店もスタイリッシュでややサブカル色の濃い店舗構成になっています。

1F入口付近

1Fはトレンド・ファッション・カルチャーのフロアです。 入口前にはセレクトされた新刊・話題書が置かれているほか、ファッション・音楽などのビジュアル書が中心です。 洋雑誌や手帳などの雑貨が充実しているのもABCならではでしょう。 目立って大きいのが東京でも人気の高いロモカメラのブースで、珍しさもあってか開店から予想以上の売れ行きとなっています。 特に昨年のクリスマスシーズンにはプレゼント利用が多く、ギフトラッピングに大忙しだったそうです。
2Fは生活文化に添った商品構成で、国内外の絵本、文芸、料理、カフェ関連書、インテリア、昨今流行のロハス系雑誌『ソトコト』など"Life Play Reading"がコンセプトです。 若い女性のお客様を意識したこちらフロアでは絵本がよく売れます。 なかでも戸田幸四郎さんの絵本『TODA DESIGN』のシリーズが人気で、2日後に訪問した時には商品の一部が売り切れていました。 取材中にも「ぬり絵ありますか?」とお探しの若い女性の姿をお見かけしました。

1F面陳ブース 2F 2Fカウンター

"Design Photograph Art"と銘打った3Fは専門書が中心です。 コンピュータ関係ではパソコン素材集も揃っています。 建築書の売れ筋は『商店建築』などショップ・デザインを撮影した大判のビジュアル本が非常に好調とのこと。
INAX出版の書籍は建築書の棚に置かれ、開店以来、新刊は欠かさず入っています。 「3フロア合わせて80坪と決して広くない店舗なので、先ずは売れ筋を中心に入れて、オープン後の様子を見ながら追加しましょう」とお約束してから、あっという間に半年が経過し、遅ればせながらの今回の訪問でしたので、カラーの多いBOOKLETを中心に40点近く補充させていただきました。

宗教関連コーナーは、惜しくも2月末で閉店した神田店のレジ前を彷彿とさせ、なかでも『HAN-SHEN』という書籍が異彩を放っていました。 オープニング・フェアをお願いした杉浦康平さんに教えて貰ったのだそうで、このほか台湾の風俗などを手書きの図版で記した珍しい大型本も在り、版元も台湾という貴重な一品です。

4Fには多目的なイベントスペースになっています。 美術系専門学校の卒制展や企画展など年内はスケジュールが埋まっている人気ぶりです。 取材時にはデザイナーの干場邦一氏が立ち上げたデザインワーク『Katachi』の企画展が行なわれていました(写真提供:Katachi)。 展示は3月で終了していますが、3Fでの関連フェアは4月13日まで開催中で、バックや衣類などファッショナブルなグッズ類が販売されています。

3F宗教民俗
4F Gallery

若い方が多いという話から、棚に見当たらなかったコミックの在庫を確認すると「ありますよ。棚の中に紛れてますが」と渡辺氏。 よくよく探すと、ちゃんとありました。 例えば2Fの棚に『ハチミツとクローバー』や井上雄大の『リアル』、棚の上と下に谷川俊太郎詩集、村上春樹の文庫、人気の小説『バッテリー』とコミック『NANA』『の だめカンタビーレ』『BLUTO』、TVドラマ『白夜行』の原作本、宮部みゆき『模倣犯』などなど。 版形やジャンルに関係なく、棚の中に構成されていました。
これらの商品は、渡辺氏が東京の店頭でこれはと思うタイトルを一つ一つハンディ端末に入力していったものです。 商品も店のコンセプトもかなり特化していますが、徒歩5分圏内には1000坪を越える大型店がひしめいている以上、ABCのノウハウを活かしつつ、ニッチ(隙間)を狙うのは自然な成り行きです。
品揃えだけでなく、見せ方も大事なポイントです。 これまで他の書店でも目にしてきた事ですが、背表紙だけを見せて棚に埋もれがちな既刊本を、思い切って平面的に展開することによって新たな息吹を与えたり。 此処に来れば何でも揃うというのではなく、何かがある店だとお客様に思わせる為には、毎日の新刊情報に目を通し、店に合ったものだけを選別して仕入れる地道な努力が欠かせません。 空港から近い福岡ですが、版元はそう頻繁には営業に伺えません。「FAXでいいから新刊情報を送って欲しい」と渡辺氏は訴えます。

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全体的に店内は落ち着いた雰囲気で、ファッショナブルな印象を受けました。 天井はロフト仕上げ、床はウッド、棚もブラウン系で、それらの内装に真っ白な椅子がまぶしいくらいに映えていました。 書棚の上のサイン表示は英語だけのストイックなものでした。
界隈にこのようなコンセプト・ショップは見当たらず、流行に敏感な若い方を中心にお客様はジワジワと増えています。 集客は平日よりも土日に集中し、圧倒的に多いのが20代の若い女性だそうです。 六本木や青山店ではエプロン姿の料理人のお客様をよくお見かけしましたが、同じように周囲に飲食店は多いものの、福岡店への訪れは未だ少ないようです。 デザイン関係のお客様には馴染みがあったというABCも、一般への認知度はまだまだこれからです。 曇天が多い福岡でも特に今年の年頭は雨が続いた為、客足に大きく影響したと恨めしそうでした。

「立上げは大変だった」と遠い目で振り返る渡辺氏は、バブル期のABC六本木店を経験しています。 「積めば飛ぶように売れていた」という時代から15年、東京から遠く離れた福岡の地で、ネット時代における書店の可能性についても話が及びました。 検索ボタン一つで知りたい情報が瞬時に入手できる昨今、出版業界を取り巻く環境は厳しくなる一方です。 しかし店頭でなければ出会えないものがあると、これまで取材してきたどのショップでも耳にし、目にしてきました。 東京におけるABCがそうであるように、本や展示以外にも最新の情報に繋がるような何らかの仕掛けが、ここ福岡でも店内のあちこちに演出されています。 例えば、3Fの小さな黒板に「16日はゴミ拾いの日」と書かれたチョーク文字。エコ活動を続けているNGOの告知だそうです。
温かくなるこれからの季節、ABC福岡店内の白い椅子に腰掛けて「読書の春」を楽しまれては如何でしょうか。


青山ブックセンター福岡店

〒810-0001
福岡県福岡市中央区天神 2-7-14
天神アクティビル

TEL:092-722-3330
FAX:092-722-3335

営業時間:AM11:00〜22:00
年中無休(年始を除く)

青山ブックセンター福岡店 URL: http://www.aoyamabc.co.jp/


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