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宙・間・色に出会う

福嶋敬恭展

会期 :2006年9月1日(金)〜9月27日(水)   休廊日 : 日祝日


2005年、福嶋敬恭の教え子の展覧会をきっかけに、丹後半島にある仕事場兼住まいが、奇想天外なスケールと構造をもつものだと知り、INAXのもうひとつのギャラリー企画「自給自邸展」のために京都府伊根町に出かけた。
海辺に建つそこは、元鶏舎だったところをすべて手作りでつくり上げたもので、まるで多素材で構成された巨大で重層的な彫刻のような、あるいは海に浮かぶ奇妙な構造をもった船のようにも思えた。

福嶋敬恭は1960年代から活躍する日本の代表的な彫刻家で、ミニマルで鮮やかな色彩の研ぎ澄まされた幾何学形の作品を制作してきた。
1982年、ここが伊奈ギャラリーと名乗っていた時の個展では、思いがけず朱と金彩のぐるぐるの渦やエンタシスが描かれた平面作品だった。その後作品に触れる機会は少なく、長い時を経て2005年の邂逅になった。伊根町で、福嶋の数十年にもわたる膨大な作品と、それらがぎっしりと詰まった空間に向きあった。ここは誕生の場所、ここに何もかもある、と思った。加えて福嶋は、2001年より宇宙航空開発機構(JAXA)との共同研究「宇宙への芸術的アプローチ」にも携わっていた。 福嶋に2度目の展覧会を依頼したくなって、はじめて出会うように彼の作品をたどってみた。彼の営為は、立体作品も平面作品もすべてが、立体と平面の多面性をもっていることを現し、立体や平面と名指すことを無化しようとしていた。立体は平面、平面は立体。彼のあらゆる作品は、宇宙にあってはそれらの概念も状態も無効で無限なのだということを体現していた。
たとえば2002年の大きな横長の単色のキャンバス9枚組の作品「MIND GARDEN」は、一点ずつ違う色で塗られているが、それは平面の組作品ではなく、色ごとのキャンバスは四角い穴で入り口で、そこを通ってどこかへ繋がっていく装置だった。だからこそJAXAの研究も、宇宙から飛んできた隕石に当たるように、彼にやってきたのだろう。
2002年、国立国際美術館での回顧展ともいうべき大掛かりな展覧会をしたが、図録の作品をタイトルでたどってみると、1960年代は形状や色名を示し、70年代は幾何学形で無題となり、80年代はアクリルや油彩の絵画も多く、彫刻は有機的なモチーフになる。80年代後半から90年前半には、平面と立体が交じり合い多層になり、1997年、突然のように福嶋はタイトルを造語する。 「宙間色」「宙間」。縁をもったアルミニウムの作品と、夜光塗料の塗られた発泡スチロールの円弧がともに「宙間色」と命名されていた。
「宙」と「間」と「色」がとけあうこと。宙とは、間とは、色とはなんだろうか、どこにあるのだろうか。今展では、「宙音」という事態があらわれる。


入澤ユカ(INAXギャラリーチーフディレクター)


INAXギャラリー2 2006年の展覧会


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