高橋(たかはしかずや)さんの作品は、白い紙一枚を丸めたり、ひねったりしてできる、月の満ち欠けのようなカーブをもった、シンプルなかたちの磁土のオブジェです。 削ぎおとされたシャープなふちの線が、刃物の切っ先のように鋭く緊張しています。

彼のイメージの源泉は薄暗い闇に佇む仏像です。 重量感があるのにほのかに浮んで漂っているように感じ、また紡錘形の双眸に惹かれるといいます。
なだらかなカーブの眸には鋭いまなじり眦をも併せ持っていて、高橋さんは自らの作品で、この相反する要素の柔らかさと緊張を表現しようとしています。

高橋さんの技法は、有田の磁土を水ガラスと水で溶いて石膏型に流し込み、できた厚さ5mmの層を成形して窯に入れ、焼きあがった後、表面をサンドペーパーで丹念に磨き上げて仕上げます。 やきものの特質でもある、炎に変容するかたちというよりも、飽くまでも自らの感性に従ったラインをつくり上げるために考えられた技法です。 その滑らかに磨かれた肌は光を内包しているような美しい輝きを放っています。
今展は高橋さんの初個展開催になります。