土を成形し、窯で焼いただけのシンプルな直方体、れんが。

INAXギャラリー、今回はこの、れんがに焦点をあてます。れんがのもつ素材としての魅力、そしてれんが建築のさまざまな側面を探ってみようと思います。題して、「れんがと建築展 − 積み重ねた美の表情 −」

この企画きっかけとなったのは一冊の石版図集『CONSTRUCTIONS EN BRIQUES』 （れんがの建築）でした。 この印刷物は約100年前にフランスで発行されたものです。 エコール・デ・ボザールの建築家たちによって描かれたパース、立面図、豊富な組積パターンの数々は、繊細な色彩で、私たちにれんが建築の多様な可能性を示唆してくれます。

会場では、この『CONSTRUCTIONS EN BRIQUES』150余点より厳選した石版画30数点を展示の核として、これをもとに、往時のヨーロッパ建築を彷彿とさせる、建築の入口、窓、壁、そして煙突を実際に積んでみました。 施工の監修はれんが家業の傍ら、窯業関係の資料収集と研究に精力的に取りくんでいる鬼頭日出雄氏。れんがの制作と焼成にあたっては岡本煉瓦株式会社に、写真展示については木村昌夫氏、長谷川章氏に多大なご協力を頂きました。

土をただ乾燥させただけの日干しれんがを起源とすれば、れんがの歴史は数千年におよびます。日本では関東大震災を境に激減し、わずかに残るのみとなったれんが建築ですが、ヨーロッパには今でも数多くが現存しています。そして、れんがは、いまだに魅力的な建築素材、仕上げ材なのです。

土と火と人の手のぬくもりがつくり出したれんが。赤・黄・白・黒のシンプルな直方体が積み上げられて生み出す表情の、何と豊かなことか。この会場で、その手触りを今一度見直して頂き、れんがの織りなす彩なる世界をご覧いただければ幸いです。

INAXギャラリー