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Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。

INAXギャラリー特別企画展10daysセレクション
−予兆のかたち 7−



栗山斉 展

会期 : 2005年8月1日(月)〜8月10日(水)
休廊日 : 日祝日

今年で7回目となる10daysセレクション展には150名の応募を頂いた。この公募展は毎月開催している1ヶ月という長さでは表現しにくい作品の展覧会をする。会期が短いことにふさわしい表現とは、機器や装置や素材の旬に左右されるものだったりする。毎回新しい表現に出会って驚かされる夏の楽しみ。今回は、光、音、映像がゆっくりと、ちょっと懐かしく流れる。

栗山斉の作品は蛍光灯を使ったインスタレーション。不規則な点滅を繰り返す白々とした光が、かすかな電気音とともにリズミカルに動き回る。遠くの落雷の破裂音に似た蛍光管へのノスタルジー。

「Life」の光はコンピュータのプログラムにより、蛍光灯の安定器に電気信号を送り、機械のバグによって偶発的に生まれる現象を、切れかけている蛍光管の様子として現したものである。

夕闇、INAXギャラリーの窓からは銀座の夜景が真正面に見える。カラフルなイルミネーションと流行のスモークガラスから透過される淡い光が複雑に絡み合って街を彩る。その時、時々切れそうに点滅し、一瞬恐ろしい漆黒の闇をつくり、あるいはのっぺらぼうにあたりを照らす蛍光管の光と音の幾夜もの暗がりを思い出した。ジジジ、チラッ、チラッという音。呼気のような光は、高機能な光の氾濫の中で、ゆっくり動く生きもののように新鮮だった。

栗山は昨年大学院を修了した若手作家で、映像を光ととらえて他の物体に投影させる作品や、光源そのものを作品として、人やものとの関係性を考えている。

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カトウチカ 展

会期 : 2005年8月19日(金)〜8月29日(月)
休廊日 : 日祝日

カトウチカの作品は映像で、タイトルは「Reading Water」。

画廊の窓外に流れる川、画廊の壁一面にも流れる川の映像、別の壁にはボートを漕ぎ続ける人の映像と、錯覚で酩酊しそうな設定の中、観客はぼんやりと本のページが写ったネガプリントを持ってそこに立つ。まるで濡れないまでも川にはまり、流れる水にたゆたう気持ちになる。カトウチカの作品もまた、現在の映像なのに、古い8ミリや16ミリフィルムのように、ゆっくりとしたリズムが特徴である。

手に持ったプリントが映像の水に浸され、掌に水をすくっているような、自分の肉体の一部が水を孕んでいくような、水の映像を通してイメージの内外を行き来する不思議な体験だ。

カトウはこの他にも、細長く切られた白い紙、自分が撮影した写真、白い小さな積み木のオブジェ、発泡スチロールの粒といったものをアトリエのような白い部屋に点在させたインスタレーションを行ってきた。壁に映る光も作品の一部として撮影した情景の写真など、穏やかな光、強い光、ゆるやかに変化していく光と、いずれの画面もしっとりと水に濡れているような独特の空気感の作品をつくってきた。一時たりとも同じ状態がないことを、とらえつづけたいという作品や活動は、時には、ユニットを組んだプロジェクトやワークショップにつながっていく。つねに人やものがクロスオーバーする関係性が提示されている。複雑に入り組んだ川のインスタレーションは、そうした背景の多様性もあるのか、清涼感だけでない、ゆったりと深く思いを巡らせるような雰囲気を持つ。

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大橋恵美[INAXギャラリー]


INAXギャラリー2 2005年の展覧会


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