ごあいさつ

INAXギャラリー大阪、1990年10月の現代アートは、大阪に住み岐阜県土岐市で制作を続ける三島喜美代さんの陶による"クレイ・クレイジー"展です。
三島さんは1932年大阪生まれ。50年代はじめアンフォルメルの影響を受け、雑誌や新聞紙を画面に切り貼りした平面作品で注目をあつめましたが、1971年頃より、やきものにそれら雑誌や新聞の紙面を転写する表現にとり組みはじめます。
薄くのばした陶土に英字新聞の紙面を模写し、シルクスクリーンの手法で転写した新聞状のやきものは、「新聞のやきもの」「やきものの新聞」という二重、三重のパラドックスを見事に「モノ」の姿で見せてくれた土の表現の画期的な出来ごとでした。 三島さんの文字へのこだわりは作家としてスタートして以来一貫しています。 表現素材が土に変わってから、新聞に始まり、ダンボールのパッケージ、チラシや広告塔、マンガ本などマスの量で印刷されては、あっという間に色褪せ消えてしまうものを、永遠ともいえるやきものに封じ込めようと企図しつづけたのはどんな理由からだったのでしょうか。

今回、会場は、クラッシュされた陶の紙クズの「夢の島」です。 いよいよ過激さを増した三島さんは、マスメディアのかたちが今まさに死に絶えようとしている様相を作品として構成します。 陶芸家という枠では語りきれない作家三島さんの試みは、様々な素材と対峙している他の美術表現者にとっても刺激的な光景となるでしょう。
また、数多いこれまでの個展やグループ展の中でも、大阪での三島さんの発表は、実に20年振りとなります。

INAXギャラリー大阪