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道具の心理学
−いまモノ語りが始まる−

"モノ語り" 解 説

"モノ語り"は、INAX BOOKLET『 道具の心理学』より抜粋


"踊る電気釜"
踊る電気釜

「ちょっとした愛嬌によって、道具や物に対して愛着を覚えることがある。
この電気釜はわが配偶者が学生時代から使用していたもので、小ぶりではあったがエネルギッシュ。炊き上がる頃になると、蓋をガチャガチャ、さらにタップダンスでもするようにガタゴトガタゴト足を踏みならしそこらへんを動き回る。
この「踊る電気釜」も晩年には、「もう疲れたから引退させて」とでも言っているようにスイッチがすぐ元に戻ってしまうのを、「そこを何とか」となだめすかしながら、最期まで楽しませてもらった。こいつは処分するには忍ばず、押入れの奥にしまってある」

林丈二 (著述家、イラストレーター、デザイナー)


"黒のドレス"
dress

「黒の服が好き。黒はわたしのアイデンティティになっている。
かくも黒が心をひきつけるのは、それが絶対的な色だからだ。ワードローブを開けると黒一色。取り出すのに苦労する。そのなかでも、ことに好きなのは黒のドレス。 なぜ、ドレスかといえば、ファッション・ニンゲンのわたしは、実用性から解放された服が好きだからである。女王様のように誇らかにおのれの主権を主張する服、それがドレスだと思う。そう、ドレスは"絶対"の服なのだ。愛する黒のドレスは、わたしの共犯者、もうひとりのわたし自身だ」

山田登世子 (愛知淑徳大学教授)


"踏み台"
踏み台

「この踏み台は、祖母の家にあった。
昭和10年代、柱時計が一般家庭に普及した頃、1日1回柱時計のゼンマイを巻く役は私だった。背のびしての仕事で、70歳を越えた祖母が台と私の足をおさえていた。
年老いると、高い所に物を掛けるのも、はずすのも苦痛である。そのつど祖母は、私が来るのを待っていた。祖母が亡くなって40数年、ここには祖母が生きている」

田中忠三郎 (北海道・東北民具研究会会長)



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