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鳥瞰図絵師の眼
−Bird's-eye Dream−


解説ページ


鳥瞰図絵師の父・吉田初三郎
吉田初三郎(1884〜1955)は大正から昭和にかけて活躍した鳥瞰図絵師である。 折からの鉄道や旅行ブームにのって大正の広重とも呼ばれた。
明治17年京都生まれ。 同35年京都三越友禅図案部に就職。その後画家を目指し上京、白馬会研究所、洋画家・鹿子木孟郎の門をたたく。 師がフランス留学から戻り、「広告やビラは一流の大家が描いている」という言葉を期に、その後、絵葉書、ポスター、観光マップ、表紙装幀などを手がけるようになる。
吉田初三郎は生涯約1000種類以上を描き、今日の鳥瞰図の基礎をつくりあげた。 色美しく、構図も確かで、そして特に見えないところまで描いたり、デフォルメされた独特の図案が特徴とされた。 それは後に「初三郎式」とも呼ばれるようになった。
会場写真
「熱海温泉鳥瞰図」 (INAXギャラリー展示より)


現代の鳥瞰図絵師作家 [インタビュー]
下記は、展覧会図録BOOKLETの収録記事をもとに構成しています


石原正の眼と手法
原画
会場写真より
「ニューヨーク2000」(ロッドリング・部分)
有名なヘルマン・ボルマンのニューヨーク鳥瞰図に衝撃を受け、地図の面白さを知りました。
私の鳥瞰図は、空撮写真や現地取材をもとに描いていきます。とにかく手間のかかる仕事です。 1作品をつくるのに少なくとも1年から2年かかります。 コンピュータでできる時代になぜこんなに手間暇かけてつくるのか、ヘリコプターを飛ばしての撮影も金がかかるでしょうに、と聞かれますが、データを入力してコンピュータでつくった鳥瞰図の屋上などを見ると、のっぺらぼうで、死んでいるビルに見えるんです。 街が生きていません。
実際の屋上にはいろいろなものがある。ニューヨークだったら古めかしい木樽の貯水槽やプールがあったりする。 それをきちんと描くことによって、生活しているビル、生きている街になるんです。
最後の仕上げの墨入れで使う筆記具は街の雰囲気によって替えています。 例えば、奈良と天理は面相筆でした。 杉や松などの針葉樹の枝がはね上がった感じや、奈良の大和造りの、屋根の真ん中が膨らんでいる重量感を出すのには筆でしたが、鎌倉はペンなんです。鎌倉は何度も地震があったために、屋根をものすごく軽くつくってある。 だから重たい感じにならないペンです。
京都は街全体が直線で、屋根も膨らみがなくて真っ直ぐだからロットリング、飛鳥は7割が田圃ですから、土臭さを出すため、頭を少し丸くした鉛筆を、というふうに描いていきます。


村松昭の眼と手法
自宅周辺のイラストマップをつくったことがはじまりで、子供の頃から慣れ親しんだ奥多摩などの山の散策絵図を描きはじめました。 その後、源流から河口までの絵図があったら面白いだろうと、川を描きはじめたんです。 川を描くようになってから、文物の絵を入れることが多くなった。 川沿いには昔から人が住んでいたせいか古墳や史跡がたくさんあるんです。 それらは絵にしたほうがわかりやすい。
絵地図がいいのは、現代のものと昔のものを一緒に描いてもおかしくないところです。 桜の名所では桜を描き、紅葉のきれいな所は紅葉を。四季も同画面に一緒に描けちゃうんです。
コンピュータがつくったものとぼくが描いたものでは、山の形が違っていると思います。 例えば奥多摩には大岳山という、横か見ると頂上の一部が尖っている山があって、どこから誰が見てもすぐわかる形をしている。 鳥瞰だとその形にならないんだけど、あえて横から見た形を入れています。 頂上近くの岩の感じなども、コンピュータはもちろん地形図にも出てこない。 いちばん細かい10m間隔の等高線でも5m四方の岩は無視されちゃう。
ところが実際に登って行くと5mの岩は巨大で、いやが応でも目につく。 こうした山の特色は、現地に行ってスケッチして、その感じを忠実に描いています。
できるだけ山の形をちゃんと伝えたい、その山らしい雰囲気を出したいと思っているんです。
天竜川散策絵図
「天竜川散策絵図」


友利宇景の眼と手法
会場写真
会場写真より
「南極大陸パノラマ」(部分)
小学生の頃から天文学とか地質学とか自然科学が大好きで、そういう本をよく読んでいました。 中学生になると岩石の採集に、さかんに山へでかけました。 この頃の経験で地形図がよく読めるので、今の鳥瞰図制作にたいへん役立っています。 鳥瞰図というのは地図上の情報を立体化することです。
ぼくは、鳥瞰図という風景画をシンフォニーと考えるなら、地形図は楽譜なんだとよく言います。 楽譜はデジタルな記号、地図も記号です。 それを頭の中で演奏すると、美しい山々や川といった風景画がイメージできるわけで、鳥瞰図を描くというのは、楽譜を見てシンフォニーを演奏するようなものなんです。
大自然をつくる基本の水と空気の美しさを描きたいと思っています。 そのため遠くに行くほど空気の層が増していくという物理現象を描いて遠近感をだす、空気遠近法という技法を使っています。
また海の色は3層、4層とブルーの色を重ねて、深く澄んだ海の感じを出している。
そして描くときいつも意識しているのが、どんな地域も地球の一部であるということです。 必ず、地平線や水平線は円弧の一部として描いています。 地球は人間と自然の共有体だということをつくづく感じます。 ぼくが描く鳥瞰図の中には、人間の痕跡と自然が必ず混在している。 鳥瞰図を描いていて面白いのは、地球という空間的スケールと、何万年、何千万年という歴史的な蓄積が背景にあるところなんです。



関連リンク
アトリエ77
http://www2.odn.ne.jp/~cdf21010
絵地図作家、村松昭さんのホームページ

アトリエバーズアイ
http://www.birdseye-map.com
鳥瞰図絵師、石原正さんのホームページ





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三人の絵師たちの天空からの眺め 展」記録
 ・・・ 東京 ギャラリー2では、原画を含む作品展を開催しました (2001年3月にて終了)

作家略歴  ・・・ ギャラリー2 上記データへリンクします




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