gallery2

2001年11月のINAXギャラリ−2 Art&News
Aeneas Wilder 展
− 超重力・無限再生のかたち −

会期:2001年11月1日(木)〜28日(水)
休館日:日祝日

Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。



超重力・無限再生のかたち

入澤ユカ(INAXギャラリーチーフディレクター)

アニアス・ワイルダーの2回目の展覧会を迎える。 2000年5月INAXギャラリーでの、 はじめての展覧会から数えると1年半しか経っていない。 異例の間隔の短さだ。 なぜそうしたのかと問われれば、アニアスの作品は、誰も所有できないから、近くで今いちど、素材の質量を感じたり、作品がそこにあるときの、驚きや嬉しさの記憶を増やしたかった、と。 彼は自分の国にいることがほとんどないほど、世界のあちこちに滞在している。 時折ある土地で、そこの素材をつかったりして制作された、ある時間だけ存在した作品を、デジタル画像で送ってきてくれるが、いつも、感嘆の声をあげながら、再び同じものを見ることができないのだという切なさにかられていた。 世界のどこかで、今日もうまれつつある彼の仕事を、そのプロセスもふくめて、再び見たいという欲求を押さえきれなかった。

会場写真 会場写真

突然あらわれて、多くの観客を惹きつけたアニアス・ワイルダー。 なぜ惹きつけられたのだろうかという理由には、私たちが木や板に親密に暮らしてきたこともあげられる。 また、かたちが釘や接着材で固定されていないという驚き、膨大なエネルギーのかたちを、惜しげもなく壊してしまうことも衝撃だった。 積み木のような単純さなのに、自在に組みあげられたどのかたちも、ほんとうにきれいだった。 アニアスはスリリングなプロセスと、恩寵のようなため息技で観客を魅了するスカラプチャーサーカスの主役だ。 サーカスが各地を巡業するように、彼は素材を現地で調達し、かたちをつくって、味わってもらってから、壊してまた旅に出る。 前回、年配の観客が会場で写していたビデオフィルムに見入りながら、[なるほど、こりゃあ江戸っ子の芸術だな、宵越しのかたちを持たねぇという精神だ、気に入った]と、声をあげて感動していた。

今回は私たちからのリクエストで、不揃いな木切れによる球体も出品される。 それは少し前に送られてきた写真にあった。長さもばらばらな雑木で、細い角材や板が井桁に組みあって、球体になっている。 地面との接点は、極端に言えば点なのに、きちんと立っている。写真を見た美術評論家の中原佑介さんは[これは、すごいかたちだよ。ありえないくらい難しいはずだ]と言ったが、当たり前のように、ざっくりとやわらかな秩序、といった印象で空間におかれてあった。 大きな作品が出来上がっていくのは2度しか見ていないが、彼の特徴は、[ざっくりとやわらかな秩序]なのだ。 幾何学形で自立する立体作品は、内在する合理性がきちんと現われ出ているといった印象で、端正な表情をしているが、アニアス・ワイルダーは、空間と物質の見えない何かを融合させる秘術をもっているかのように、かたちをやすやすと、ざっくりとやわらかく目の前に出現させる。 世界中から滞在制作を望まれているのだろうか、アニアスはいつも違う場所にいる。 彼はホームレスならぬアトリエレスの旅芸術家で、観客である私たちもまた、町々に巡りくる人気の移動芝居や歌謡ショーを待ち焦がれるように、この瞬間を逃さないでいたいと、気合が入っている。




展覧会TOP PAGE 作家略歴 INAXギャラリー2
2001年の展覧会



INAX CULTURE INFORMATION
http://www.inax.co.jp/Culture/culture.html

ギャラリー2へのご意見、ご感想、お問い合わせ等はこちら
E-mail:xbn@i2.inax.co.jp

本ウェブサイトからの無断転載を禁じます

symbol
 Copyright(C) INAX Corporation
 http://www.inax.co.jp