扉や窓や、引き出しの開け閉め･･･etc。私たちは毎日、ほとんど意識することなくドアノブ、蝶番、錠前などの見える金物や見えない金物とともに暮らしています。これら小さな金物はスムーズに動かなくなった時、はじめて気がつく存在なのかもしれません。
本展では、それら無意識に目にし触れている建築金物の、素材感やフォルムやデザイン、機能や使いごこちに注目し、金物の視点から住みごこちを探っていきます。

建築金物の素晴らしさには、視覚的なデザインはもとより、からだのリズムにあった開閉のタイミング、最後に小さくカチッと閉る音、金属の滑らかな質感など、人間の五感に働きかけてくる要素も含まれます。建築金物の歴史がある西洋には、長く大切にされてきたものがたくさんあり、日本でもそれらを手本として多くの金物が製作されました。しかし大量生産によって画一化され、それぞれの空間をさりげなく演出してきた珠玉の存在は、忘れられかけています。 今展をきっかけに、すくれた建築金物がもっている手触りや手応え、美しいフォルムがもたらす快適さを、あらためて感じ直していただければと思います。

上質でシンプルなドレスにとめられた、いとおしく、大切なブローチのように、たった一つで空間を豊かで美しいものに演出してくれる、建築金物の世界へご案内します。

展示にあたり、関係者の皆様には多大なるご協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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