日本における「土木」は、いかに水をうまく制御し、利用できるかという目的に向かって進んできました。 水は飲料、農耕や森林業、漁業、交通など人間の営みの源ですが、同時に生活を脅かす自然の力という面ももっています。

その水をコントロールするために、堰堤やダム、橋や用水路、港湾などがつくられてきました。 それらの多くの構築物の中には、土木遺産として名高いものもありますが、私たちの町や村の水辺水際にも、 ひそやかで堅牢で美しい「水辺の土木」が、いくつも存在しています。

今展では、日本各地に現存する近代土木の中から、水にまつわる土木を選び、切実な用のための構造物と、 水とが織りなす暮らしの景観を紹介します。

構造物のフォルムやディテールにいたる丁寧なしごとぶりなどは、通常は水流に隠されていてなかなか見えません。 しかしよく眺めてみれば、そこには先人たちの熱意や創意工夫、そして確かな技が存在しています。 それらのたくまざる造形美は、水の表情をさらに豊かにし、構造物と一体の、かけがえのない風景を生み出しています。 土木に深い思いを抱く方々の「とっておきの」気持ちで選んでいただいた水景からは、人の営みのありようまでが、 いきいきと見えてきます。

本展で紹介されている土木の写真は、日本全国の土木を撮り続けている西山芳一氏によるものです。 観光施設とは違って、厳しい自然や地形の中にあるそれらは、周辺に暮らす人々以外にはあまり知られていませんでした。 しかし、用をもったものの迫力と存在感を写しだす写真を通して、土木景観のダイナミズムと、自然物が織りなす美を教えられました。 風の音や流水の流れまでが聞こえてきそうな、臨場感溢れる水景にご案内いたします。

展示にあたり、多くの関係の皆様には、多大なるご協力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。

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