水辺の土木 展
−とっておきの風景−
解説ページ
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ここでは、会場で紹介している「水辺の土木」のいくつかを会場写真とともにご紹介します。
01. タウシュベツ川橋梁 02. 積丹半島の袋澗 03. 白水ダム 04. 長篠発電所余水吐 05. 牛伏川フランス式階段工 06. 琵琶湖疏水 07. 神戸堰 |
「タウシュベツ川橋梁」会場パネルより |
会場写真 |
ダム湖に沈む幻の鉄道橋【タウシュベツ川橋梁】 |
音更川支流タウシュベツ川に架かる「タウシュベツ川橋梁」は、11連、全長130m。北海道・旧国鉄の士幌線(音更線)を繋いだ44のコンクリート・アーチ橋群の中で最も長い。古代ローマの水道橋のようだが、シンプルで力強いフォルムにはモダンな機能美がある。 竣工は昭和12年。昭和31年に音更川に発電用の糠平(ぬかびら)ダムが建設され、タウシュベツ川橋梁は湖底に沈む運命となった。ダム湖の雪が消える4月には完全に姿を表し、大雪山系の雪どけ水が湖を満たす10月には、橋のごく一部が姿を見せるだけ。最も目を見張るのは、アーチの半円部分に水位がさしかかる時期で、湖面がアーチを反射して11連の輪ができる。 |
ニシン漁の繁栄を刻んだ石積み【積丹半島の袋澗】 |
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「積丹半島の袋澗」 |
「袋澗(ふくろま)」は、獲れたニシンを生かしたまま貯蔵しておくため、石を積んで囲った、いわば巨大な生け簀のようなもの。
北海道のニシン漁は明治期に主要産業へ成長した。積丹半島西部は、漁期中いち早く時化(しけ)に襲われるため、袋澗に収納したのである。 袋澗の多くは、明治後半から大正初期にかけてつくられている。規模はさまざまだが、大きなものは50mプールほどあり、底部の幅は1間(1.8m)。ほぼ正方形の石を間知(けんち)積み(間知石と呼ばれる石材を積む工法)し、石積みと石積みの間に小石や砂利を詰めた。建設費用はすべて網元の負担であった。 漁獲高は明治30年をピークに確実に減り続け、昭和30年代を最後にニシンは漁場から完全に姿を消した。 |
自然の岩を配したナイアガラの滝【長篠発電所余水吐】 |
自然の岩を利用した発電ダムの余水吐。要所にはコンクリートや石が補われている。豊川水系寒狭(かんさ)川にあり、有名な「長篠の戦い」の古戦場から3.4kmほど上流に位置する。明治45年竣工。当時、愛知県豊橋市には陸軍の第15師団が配置され、地元の産業の発展もあって、急増した電力需要に応えるために建設。設計は、京都大学を卒業したばかりの豊橋電気の電気技師・今西卓。現在も現役でJR飯田線に送電している。 |
「長篠発電所余水吐」 |
「牛伏川フランス式階段工」 |
周囲の景観に溶け込んだ人口の渓流【牛伏川フランス式階段工】 |
「日本で最も美しい砂防ダム」と賞賛される、牛伏川(うしぶせがわ)砂防ダムの階段状流水路。何も知らずに目にしたら、誰もが自然の渓流と思うに違いない。フランスのサニエル渓谷の階段工法を採用しているところから、通称「フランス式階段工」と呼ばれている。松本市南方を流れる牛伏川は、かつては絶えず氾濫を起こし、地域の村々に多大な被害を与えてきた。明治18年から開始された砂防工事は、幾多の困難を経て大正7年に完成。足かけ30年にわたった。 |
近代都市・京都をつくった水の路【琵琶湖疏水】 |
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「琵琶湖疏水」 |
琵琶湖の水を比叡山南麓を迂回して、京都市街地に導水。鴨川、高瀬川を経て淀川に繋げる計画の、明治期の一大土木事業だった。琵琶湖の水を東山の蹴上(けあげ)で低地に落として発電する水力発電所は、営利用としては日本初。工事主任は、工部大学校(現・東京大学工学部)を卒業したばかりの21歳の青年・田辺朔郎。水力発電所の建設は、当時の予定にはなかっが、田辺は工事を中断して急遽渡米。2ヵ月間で視察し、設計図を描き、発注して帰ってくる。すばやい決断だが、これがその後の京都の産業を浮揚させることになった。 |
日本唯一の多連アーチ式【神戸堰】 |
神戸堰(かんどぜき)は山陰本線神戸川鉄橋の下流にある、農業用の取水堰。大正15年に着工、昭和3年に竣工した。延長115.8m、堰高1.8m、6つの多連アーチからなる堰は、日本で唯一のものである。明治以前から、この場所には度重なる水不足が起こり、農民同士の争いが絶えなかった。そこで当時県議会委員でもあった高松村長の呼びかけにより、県の資金援助も得て、大規模なコンクリートアーチ堰を築くこととなった。川幅いっぱいに広がった静寂な水の流れは、湾曲した堰の天端を舐めるように流れ、水筋となって輝きながら落水する様子は見事。なぜアーチ式にしたのかは謎である。 |
「神戸堰」 |
写真は全て、INAXギャラリー展示より
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