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道具について | 気仙大工(けせんだいく) | 唐桑御殿 | 鉄材加工会社・高橋工業 | 展示リスト

大原造船所には今も棟梁の手となり使い続けられている道具が沢山ある。ここでほんの一例を紹介しよう
唐桑・海と森の大工 展 舟手(ふなで)ちょうな[写真中央]
家大工のちょうなより長く、頑丈に出来ていて両刀である。丸太からみよし(船首)材を削り出すときや、舵どこを削り出すとき等の早く大量に木を削るとき及び、舵や櫓を造るときに使う。
唐桑・海と森の大工 展 つば鑿(のみ)
板と板を接ぐときに独特の舟釘を使うことから、おとし釘(ぬい釘)用の溝を彫るときに使う。鑿を抜くときにつばを叩いて抜く。
唐桑・海と森の大工 展 舟手金槌(かなづち)
船大工は普通玄翁(げんのう)を使わない。木造船を鉄製の玄翁でたたくと舟が負けてしまうからだ。木の舟は、木のつちでつくる。
唐桑・海と森の大工 展 細鋸(のこ)・擦(す)り合わせ鋸(のこ)
細鋸は、下棚と上棚を合わせるとき、みよしと棚板を合わせるとき等の細かい作業に使う。擦り合わせ鋸は、板と板を接ぎ合わせるときに接ぎ目を擦って合わせるのに使う。この方法は日本独特のものである。
唐桑・海と森の大工 展 木定規・木型
木定規には、エンジンの据え付け寸法や各船の主要寸法が記入されている。
木型には、みよしの型板や敷き板船尾のため板がある。舟によって1本1本違う。

気仙大工(けせんだいく)

気仙とは岩手県沿岸南部の陸前高田と大船渡の両市を中心とする旧気仙郡地方をいう。この一帯は江戸時代には仙台領に属していた。

気仙大工はこの旧気仙郡地方の大工の総称で、この地方からは数多くの優れた大工職人が輩出し、棟梁を中心とした大工集団も形成されていた。なぜ大工職人が数多く居住するようになったのかはまだ解明されていないが、この地方には建築用材として良質な気仙杉などが生育し、木挽職人が多かったことと無関係ではない。気仙大工が高い技術をもつ出稼ぎ大工としても知られたのは、彼等が家大工でも高度な規矩術(きくじゅつ)や寺社建築を勉強していたからと考えられる。

南三陸の代表的な港町である気仙沼はたびたび火災に見舞われながらも、港町の活力を背景に地元以外の職人も受け入れて復興してきた。その中心街である南町や魚町の建物の多くは昭和4年の大火後に建設されたものであるが、地元の大工や気仙大工、東京から呼び寄せた職人達が、あたかも腕を競いあって建築したといえるような質の高い昭和初期の建物が数多く見られる。このように伝統的に大工職人を送り出す地方とその大工職人を受け入れる地方があって成り立つという建築生産システムが構築されていたのである。

唐桑御殿

船の上から唐桑半島を眺めると、小高い山の斜面、緑の木々の間に住宅が点在している。なかでもひときわ目を引くのは、反りのある入母屋の屋根に赤茶色や黒の釉瓦をきらめかせた堂々たる構えの家――「唐桑御殿」だ。唐桑御殿をこれまでに100軒以上手がけてきたのが、江戸時代から続く「酒屋」(屋号)の7代目、小山國男棟梁だ。

唐桑御殿の特徴は、四隅がピンと反り上がった入母屋の屋根と、贅沢なつくりの部屋である。屋根は棟から軒に垂木をわたし、さらに「木負(きお)い」「茅負(かやお)い」「片(かた)な刃(ば)」という部材を3枚つないで長く延ばしていく。軒を大きく出すために、垂木を受ける下の部分に「せがい」とも「せんがい」ともいう出し梁を設ける場合もあり、力強い屋根の反りをつくるため様々な伝統工法が駆使されている。
天井板で隠されてしまう小屋組みには「投げかけ梁」の技法を使う。組むときには、釘を使わずに、ホゾとセンで木を接合していくのだ。

そして襖を外せば50畳にもなる和室には立派な神棚が祀られ、漁師とその家族の暮らしを見守っている。「投げかけ梁」も「せがい」も気仙大工がよく使用する構造技法であると言われている。気仙大工との関連ははっきりとわからないが、技術的交流があったとしても不思議ではない。唐桑半島には300軒近い唐桑御殿があるとされている。

唐桑・海と森の大工 展
[図面]濡れてもかまわないよう木片に描く

唐桑・海と森の大工 展
[浦祭り船]大漁祈願の祭り用に制作した

唐桑・海と森の大工 展
[船プレート]MGは宮城県、3は船の大きさの等級、7401は登録番号を表す
唐桑・海と森の大工 展
[おとし釘(左右)、ぬい釘(中央)]

鉄材加工会社・高橋工業

唐桑・海と森の大工 展
[ランバン外壁のモデル模型]
唐桑・海と森の大工 展
[ランバンブティック銀座店]
唐桑・海と森の大工 展
[ランバンブティック銀座店]
気仙沼市にある高橋工業の全身は、江戸時代から代々続く造船所だった。1992年、それまでの「海」の仕事から「陸」の仕事へと転身し、以来、造船の多様な技術、とりわけ鉄板を思いのままに曲げる加工技術を生かして、新しい分野を切り拓いてきた。

高橋工業が建築の分野を手がけたきっかけは、建築家・石山修武氏が設計した気仙沼市の「リアス・アーク美術館」。その後、石山氏との共同作業が続き、「TREE HOUSE」、「星の子愛児園」、「世田谷村」などで、複雑な曲面構造の金属工事に携わってきた。建築家・伊東豊雄氏が設計した「せんだいメディアテーク」では、あの海藻のようにゆらめく、ねじれ傾いた鋼管柱の溶接を担当した。溶接箇所はのべ500kmもの長さに及び、溶接による鉄の収縮を最小限に抑えるという難題もクリアした。

構造設計家・梅沢良三氏の自邸「IRONY SPACE」では、壁、床、屋根、階段、そしてテーブルや椅子などの家具もすべて鉄で製作。このときも溶接によって生じる鉄のひずみを修正するのに、「鐃鉄(ぎょうてつ)」(鉄を曲げる加工法)という造船の技術が駆使されている。

2004年2月には、銀座のメインストリートにある高級ファッションのブランドショップ「ランバンブティック銀座店」のファサードを建築家・中村拓志氏からの依頼で製作した。黒い鉄板に3000個の丸穴が開けられ、透明なアクリルの円柱がはめ込まれている。フラットな表面をつくるために、造船技術が応用されたのだ。

このような高橋工業の果敢なチャレンジを支えているのは、造船の世界で培われ、脈々と受け継がれてきたものづくりの精神にちがいない。

唐桑・海と森の大工 展 唐桑・海と森の大工 展 唐桑・海と森の大工 展
[ランバンブティック銀座店/夕暮れ時は一際美しい。銀座の街に海と森の技術が生きる]
唐桑・海と森の大工 展 唐桑・海と森の大工 展 唐桑・海と森の大工 展


展示品リスト
写真・文字パネル 計18点
からくわ丸 木造船1点
大原造船所の再現 看板ほか、18種類48点
船のつくり方の工程写真(アルバム) 2
唐桑の海(水彩画) 1
浦祭り船(木造船のミニチュア) 1
船大工道具 木定規ほか31種類111点
唐桑御殿の瓦(釉薬瓦) 1
唐桑御殿の内部(写真) 1
ランバン外壁モデル(模型) 1
ランバン外壁モデルの解説(写真) 3
銅管とアクリル 各1
唐桑の海、大原造船所ほか(映像) 3 計203点

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