手塚愛子 展
- 糸の浮橋 織のきざはし - |
手塚さんの作品はゴブラン織りや総刺繍の織物から、糸を引き抜いて様々なかたちをつくる平面です。作品は丸や四角にかたどった布と、そこから垂れ下がった膨大な糸の束が織りかけのように、あるいは解きかけの状態で展示されます。 布の両端を残して真中だけを引き抜いたもの、一色だけ、横糸だけ、縦糸だけを取り出したものなど様々なかたちがあります。端正に織られた布の表情や、織り模様の整然とした様子、布がつくるドレープや流麗なシルエットに比べて、手塚さんによって選ばれ引き抜かれて裸になった色糸は、何か別の生命のようになまなましく迫ってきます。ゴブラン織りのような多色の糸を使用して模様がつくられている布地からは、赤、青、黄、緑、黒の5色の糸束がきれいに分かれて現われます。祝祭のようなあでやかさです。そして、織られた時間が逆まわしにされ、深く沈殿していた想いが、消えた時間の質量をともなって吹き返してきたような、どこか秘めた激しさも感じられます。 作品のタイトルも「縦糸を引き抜く、解体すること、共有すること」、「織られ得なかったもの」、「織られたもの―もろさとともに」など、関係や行為を表わす言葉が使われています。糸の往来は、切ったり、抜いたり、繋げたり、渡したりと、そのまま様々な複雑な関係性を連想させるかのように見る者に訴えかけてきます。 手塚さんは2005年3月VOCA賞の奨励賞を受賞されます。翌4月の今展では、グループ展に続いてワンマンショーのかたちで新しい作品をご覧頂くことになります。昨今、若手作家の平面作品が際立って瑞々しい傾向にあります。既製品を用いることで、自らの表現したいことをマチエールなどに惑わされることなく、ストレートに表出してくる作品は以前からありましたが、手塚さんの作品には、古今東西扱われてきた素材を用いながら、どこにもない現代の手塚さんだけの新しい感覚を見ることができます。 作品名:「纏う絵」 |
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