Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。
[UNSOLID] によせて 阿部布美子 (登満寿館アートサロン企画) 悲しみ 自らの心の中に生まれた、あるいは自らが生み出した、悲しみと名づけられた感情にからめとられて顏をふせる。涙が色あせた部屋着に落ちる。しみた小さな丸の中に、これが更だった頃の色があらわれる。 独りの時間に、言葉は沈殿してゆく。今しばらくは僅かに身体を動かすことでさえも、澱を舞い上がらせてしまうだろう。 何ものにでも容易に撹乱されてしまうこの器を持ち歩く。その名前しか知らぬままに。 すべらかに白い肌が、撫でてみたい気持ちを誘う。豊かに表面を装飾されながら、中空であると名乗り滑稽味さえ纏って、小さな口を開けている。覗いてみたい私の興味は穏やかに押し返されて、思いだけが内部へと導かれてゆく。
四年前この同じ空間は、柵によって二分された。一方には「スッタニパータ(ブッダのことば)」から引用された、人間の貪・瞋・癈に関する言葉の数々が、断片を縫い合わせた糞掃衣を思わせる布の一面に書きなぐられたものが吊るされ、もう一方にはそれまでの技法による大作が壁を覆っていた。コーヒーによって彩色された小さな長方形の紙片の過密度なコラージュ。それは、作家の作為を見せられるというよりは、行為の堆積物が身体から剥がされ、掲げられているような当惑。
何ものにでも満たされ、移ろうであろう空のものと、頷くひまもないままに生まれた私というものと。 今は、ただ互いの似姿におかしみを湛えて向かい合っている。 他の生きものたちは、幸いにしてか持つことのない、彩り。
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