会期:2000年7月3日(月)〜7月27日(木)
休館日:日曜・祝日
Art Newsは、ギャラリー2の展覧会カタログです。ここに掲載論文を御紹介します。
李祥吉 鼓動と瞬き
入澤ユカ 過去10年ちかい作品のどれもが、見えないことを知覚したがっていた。いや知覚だけではない、聴覚や触覚や嗅覚までを空の空たるところから探し出して、一つ一つ捕まえたのが作品だった。 素っ気ない透明アクリルの四角錐の作品があるが、目に飛び込んでくるのは光があたってできた、錐の山型がつくる十字形の影のかたちであり、影はまるで箱の中に閉じ込められているようだった。彼の作品をつかまえようとすると、スルリと消える。彼のかたちは浮遊し、瞬くのだから捕まえられない。 彼のかたちは見えるというよりは瞬く。現われて瞬く。かたちが放射する物質の粒子を、鼓動と瞬きで伝える。 私の独断だが、韓国生れのすぐれた作家の作品に共通することに、作品に漲る緊張感がある。立体にも平面作品にも緊張感が共通するとは不思議だが、その中にあって1942年生まれの彫刻家沈 文燮がきり開いてきた作品の数々は、緊張がはりつめていると言ったわかりやすいかたちではないことをあらわしてくれた。柔らかさや、深みやもっともっと多くの感覚を塊にして、目の前に掴み出して、置いてみせた。沈の力はいまだに圧倒的だが、彼より20年ほど若い世代の李 祥吉は、透明さを塊として掴み出してくれた。土、木、鉄、紙、プラスチックを用いても、それらから透明さを掴み出す。アクリルやガラスやスチール、コルクや花びらまでをひきちぎって、見えないかたちから鼓動を響かせる作家がいる。
2000年のまだ7月なのに、INAXギャラリーでは3人目の海外作家を迎えた。ことばが通じなくとも作品は万感を伝える。万感は感情の感も少しは入っているが、感覚の感だ。毎回魅了されるということを解き明かそうと奮闘しているが、魅了されるという不思議さは増すばかりだ。 |
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