写真家の中里和人(なかざとかつひと)さんは、これまでに原野や遍路、宮沢賢治など、さまざまなテーマでおもに風景の写真を撮影してきました。彼の被写体には、どこか日本の原風景に対する思い入れのような心情を感じとれますが、その中に全国の｢小屋｣を写した作品があります。

｢小屋｣とは、田圃の真ん中や海辺の近くにぽつんと建っていて、農漁業の道具を収納したり、一時的な保管や加工をしたりするシンプルな用途の建物です。こうした小屋は、大抵は持ち主が自らの手で、手近かにあった廃材で、気ままに使い勝手だけを考えて無心につくられており、だからこそ産業や風土の差はありますが、建てた人の数分だけ独自で個性的です。
中里さんはこの小屋に魅了され、ここ数年全国をたずねて撮影を重ねてきました。 中里さんの感覚で選ばれたこれらの小屋の、無名の建てぬしたちの独創的な色遣い、廃材のコラージュともいうべき造形は、無心なだけにとびきり新鮮でアヴァンギャルドに映ります。

中里さんの写真の小屋には、人間と空間が慈しみあってきた時間が降り積もっているような深い味わいや、それらがもう遠い昔になってしまった寂寥など、いとなみのあらゆる場面が織りこめられています。
小屋の無心で奔放な魅力にあふれた写真作品45点をご覧頂きます。

■関連イベント■
展示以外にもたくさんある中里氏の小屋の写真をスライドで見ながら、
小屋の魅力、小屋行脚の撮影話を伺います

日時 : オープニング当日 3月1日(水) 18時〜19時
(終了しています)
ギャラリーカフェ(ギャラリー2会場同フロア)にて
入場無料(予約不要)

1956 三重県生まれ
1979 法政大学地理学科卒
1981 北井一夫氏に師事
1984 フリーカメラマンになる

写真展
1989 ｢湾岸原野｣(新宿オリンパスホール)
1994 ｢石遍路―1億年の地球旅｣二人展(ギャラリー繭)
1995 ｢夢ノ手ザワリ｣(新宿ニコンサロン)
1996 ｢風景ノ彼方―宮沢賢治・種田山頭火の世界を歩く｣(新宿コニカプラザ)
｢地表絵[地熱帯]｣(日本橋ギャラリーTomos）

1997 ｢オノマトペ−触覚回帰｣(渋谷ギャラリーSpaceAI)

出版
1991 写真集｢湾岸原野｣六興出版
1995 ｢岩手県ポラン町字七つ森へ・宮沢賢治への旅｣共著 偕成社
｢ぬけ道、より道、山頭火・九州をめぐる旅｣共著 偕成社
1998 ｢ロバの音さがし｣CDブック・クルムホルンレコード

1999 「日本人に会いたい　たずね歩いた34人の肖像」共著 (アートダイジェスト)
INAX BOOKLET「 小屋　-働く建築-」共著　(INAX出版)
1991年1月号〜12月号まで｢日本カメラ｣誌上において｢小屋・KABANO｣連載